人事労務Q&A

人事労務に関してお客様からよく寄せられるご質問と回答を月1回ご紹介します。

2020年10月
育休復帰時の配置転換について
Q

社員が育児休業から復帰する際の配属についてご相談です。
当社にはまもなく産前産後休業に入る社員がおり、その後育児休業を取る予定です。
当該社員の現在担当している業務は勤務時間が不規則になりやすく、また繁忙期には拘束時間が長くなりがちという特性があります。そのため、育休復帰後の社員に同じ業務を担当させることは困難ではないかと考えています。
我が社では人事異動は一定の頻度で実施しており、この社員も過去に社内で他の業務を担当していた経験があります。本人も、復帰後の業務については不安を感じているようであり、育休終了後のスムーズな復帰を考えると、そのような過去の経験を生かした配属を検討したほうが良いようにも思われます。
一方で、育児休業から復帰した際は、休業前と同じ業務に戻さなければならないと聞いたことがあります。
今回のような場合でも、復帰後は必ず休業前の所属部署や担当業務に戻さなくてはならないのでしょうか。

A

育児休業から復帰した社員を原職へ復帰させることは、法令上の義務というわけではありません。
復帰時に配置転換した場合でも、本人に不利益な内容でなければ法令違反にはなりません。また、何らかの不利益を伴うとみなされる場合であっても、業務上の必要性等を含めた一定の要件に該当する場合は違法にはあたらないとされています。


<育児休業後の社員の配属に関する法令上の定め>

育児・介護休業法では、育児休業後における配置につき、事業主の定めた事項の「周知」と、「育児休業後の就業が円滑に行われるための必要な措置を講ずるよう努めること」を求めるに留まっています(育児・介護休業法 第21条、第22条)。また同法を受けた「事業主が講ずべき措置に関する指針」でも、「原則として原職又は原職相当職に復帰させることが多く行われているものであることに配慮する」という表現のみが記載されています(指針第2の7(1))。
したがって、配置転換自体は制限されていないものと考えることができます。
一方で、育休を契機として「不利益な配置転換」を行うことは、妊娠・出産・育児等を契機とする不利益取り扱いに該当し、法違反となるため注意が必要です。配置の変更が不利益な取扱いに該当するか否かについては、「配置の変更前後の賃金その他の労働条件、通勤事情、当人の将来に及ぼす影響等諸般の事情について総合的に比較考量の上、判断すべき」とされています。
「例えば、通常の人事異動のルールからは十分に説明できない職務又は就業の場所の変更を行うことにより、その労働者に相当程度経済的又は精神的な不利益を生じさせることは、これに該当する」とされていますので、育休復帰にあたって明らかにハードシップの高い業務を新たに担当させることや、従来付与されていた手当の支給対象外となるような職務変更を行うと、不利益な配置転換とみなされる可能性があるといえます。
厚生労働省の「育児・介護休業法のあらまし」によると、妊娠・出産・育児休業等を契機として何らかの不利益を伴う配置転換を行った場合でも、以下に該当するような場合は、法違反にならないとされていますが、いずれにしてもスムーズな職場復帰を損なうような配置転換にならないようご注意ください。
①業務上の必要性が当該不利益取り扱いにより受ける影響を上回ると認められる特段の事情が存在するとき
②労働者が当該取り扱いに同意している場合において、有利な影響の内容が不利な影響の内容や程度を上回り、説明がなされる等合理的な理由が存在するとき

<補足事項>

これまで述べてきたように、法令では、元の部署・業務への復帰は義務付けられたものではありません。今回のご相談においては、社員の方も不安を感じているとのことでしたので、長期的な人材活用という観点からも、本人が将来的なキャリアをどのように考えているか、現在はどのような点に不安を感じているかといった事を確認しながら、将来の活躍に資するよう復帰後の配属についても検討されることをお勧めいたします。
検討にあたっては、必要に応じて厚生労働省の「育休復帰支援プラン」策定マニュアルも参照してみると良いでしょう。

=ご参考=
厚生労働省
「育児・介護休業法のあらまし」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/000103504.html

厚生労働省
「育休復帰支援プラン策定のご案内」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000067027.html

※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。

【バックナンバー】
2020年

open

2020年9月
36協定の労働基準監督署への届け出について

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Q

36協定の届け出について、ご教示ください。
当社は、全国各地に様々な規模の事業所があります。労働組合はなく、36協定は、年1回、各事業所で選出した従業員代表が署名・捺印したものを、当該事業所を管轄する労働基準監督署(労基署)へ届け出ています。
実は先日、就業規則については、作成・届け出が必要となる最少人数が法律で決められているということを知りました。当社には、従業員数が10名未満の小規模な事業所があるのですが、36協定についても「従業員数が少ない事業所では届け出不要」というような定めはあるのでしょうか。
また、複数の事業所の36協定を、本社で一括して届け出ることが認められている会社もあると聞きました。それが可能であれば、事務処理の負担軽減につながると思うのですが、本社一括で届け出るということは、本当に可能なのでしょうか。

A

事業所の従業員数によらず、会社は、時間外労働をさせることについて36協定の締結・届け出を義務付けられています。
また、複数の事業所の36協定を本社で一括して届け出ることが認められる場合もありますが、過半数組合があるといった一定の要件を満たす必要があります。貴社の場合は、過半数組合を持たない会社ですので、「本社一括届け出」は認められません。


<36協定について>

労働基準法により、労働時間は原則、1日8時間・1週40時間以内とされています。会社は、この時間数を超えて、従業員に時間外労働をさせる場合には、36協定を締結し、労働基準監督署へ届け出ることが義務付けられています。
36協定の根拠となる労働基準法第36条では、「何人以上の事業所で、締結が必要(それに満たなければ、締結は不要)」といった定めはなされていません。少人数の事業所であっても、時間外労働をさせるのであれば、36協定の締結・届け出が必要です。
尚、就業規則については、労働基準法により常時10人以上の労働者を使用する事業所で作成し、所轄の労基署へ届け出ることとされています。

<36協定の「本社一括届け出」>

2003年2月に厚生労働省労働基準局長名で出された通達により、「本社一括届け出」の手続きを行えば、本社以外の事業所も所轄労働基準監督署へ36協定を届け出たものとされることになりました。本来は、事業所ごとに36協定を締結し、それぞれの事業所を管轄する労働基準監督署長宛に届け出ることとされていますが、複数事業所がある会社で、個別に36協定の締結・届け出を行うことは非効率であることから、認められるようになったものです。
36協定の「本社一括届け出」が認められるためには、協定事項のうち、「事業の種類」「事業の名称」「事業の所在地(電話番号)」「労働者数」以外の事項が同一であることが求められます。従って、「協定の当事者である労働組合の名称または労働者の過半数代表者の職名・氏名」が、全ての協定で同一でなければなりません。
「労働者の過半数代表者」は事業所ごとに選任しますので、複数事業所の過半数代表者を1人の社員に統一することは不可能です。その為、36協定の「本社一括届け出」が認められるのは、全ての事業所の過半数以上の労働者で組織する労働組合がある場合に限られることとなります。

<補足事項>

過半数組合がある場合においても、36協定の「本社一括届け出」が認められるためには、一部を除き、協定事項が事業所間で同一である必要があります。この要件を満たすために、最も時間外労働が長く見込まれる事業所に時間数を揃える形で、36協定を締結することも考えられるかもしれませんが、「本社一括届け出」を行うことを目的として、各事業所の協定事項を同一とすることは望ましくないとされています。36協定を締結するにあたっては、各事業所の実態により一つ一つの協定事項を定めることが原則である点、ご留意ください。

※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。

2020年8月
数年に渡り支給実績のない手当の廃止について

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Q

当社の就業規則には、複数の手当が定められているのですが、中には支給対象となる社員がおらず、実質、形骸化してしまっているものもあります。そこで、長らく支給実績のない手当については廃止したいと考えています。
一方で、「就業規則を改定する際、労働条件の不利益変更はできない」といったことを耳にします。支給対象となる社員がいない手当の廃止であっても、不利益変更となり、手当の廃止は法令上、認められないということになるのでしょうか。

A

現時点支給対象となる社員がいない手当であっても、将来支給の生じる可能性があれば、それを廃止することは不利益変更にあたります。
不利益変更は、労働者保護の観点から避けたほうが良いと考えられますが、法令上、一切禁止とされているものではありません。社員の同意がある場合や、一定の条件を満たす場合には認められるものとされています。


<労働条件の不利益変更について>

不利益変更とは、社員の労働条件を引き下げるような変更を指します。
現時点で支給対象者のいない手当であっても、就業規則に定められている限り、支給要件に該当すれば支給を受けられることが保障されています。手当制度を廃止すると、将来に渡って当該手当の支給を受ける可能性がなくなることになり、社員にとっては労働条件が引き下げられたこととなります。

<不利益変更が認められる条件>

労働契約法により、会社が、社員にとって不利益な内容となるような就業規則の変更をすることは、社員の合意がない限りできないとされています。但し、以下の条件をいずれも満たす場合には、例外的に不利益変更が認められます。
①変更後の就業規則を社員に周知すること。
②就業規則の変更が、以下に照らして合理的なものであること。
 ・社員の受ける不利益の程度
 ・労働条件の変更の必要性
 ・変更後の就業規則の内容の相当性
 ・労働組合等との交渉の状況、その他の就業規則の変更に係る事情

長らく支給実績がなく、形骸化しているような手当の廃止であれば、実質的に社員の受ける不利益はないと考えられますが、今後支給される可能性がある場合は、慎重な対応が必要となります。変更に当たっては、変更点を社員に周知することや、上記基準において合理的と認められる変更であるかどうかを会社として精査することをお勧めします。

<補足事項>

就業規則の不利益変更を実施するにあたっては、合理的な変更と認められるように変更内容を検証し、社員へ周知するだけでなく、併せて個々の社員の合意をとることが望ましいと考えられます。また、具体的な対応方法として、金額の程度にもよりますが、不利益の程度を緩和させるために、一定期間の経過措置を設けるといったことや、社員に周知するために、就業規則を公開するだけでなく社員説明会を開くことが一般的に行われます。

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2020年7月
長時間労働者に対する医師の面接指導について

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Q

当社では、時間外・休日労働時間が月80時間を超えた社員に対して、産業医の面接指導を受けるよう案内をしています。
先月、この基準を超え、面接指導の対象となる社員がいたのですが、「何かあれば、かかりつけの医師に相談するので、産業医の面接指導は必要ない」と頑なに拒んでいます。このまま、本人が拒否を続け、面接指導が実施できない場合、会社は法令違反に問われることになるのでしょうか。
また、法令違反にならないとしても、会社としては、長時間労働による健康面でのリスクが心配なので、医師の面接指導を受けさせたいと考えています。医師の面接指導を受けさせるためにはどのような方法があるか、ご教示ください。

A

対象者である社員が希望しないのであれば、医師の面接指導を実施しなかったとしても、法令違反とはなりません。然しながら、会社は安全配慮義務を負っていることから、本人からの申し出がなくても、面接指導を実施するよう努めることが求められます。
まずは、長時間労働による健康リスクや、医師による面接指導を実施する趣旨を社員に説明し、理解を得ることが重要と考えられます。また、面接指導を拒む理由を確認し、「産業医」以外の医師との面談であれば受け入れられるということであれば、他の医師の面談を勧めることも一案です。


<基本事項>

脳や心臓疾患の発症は長時間労働との関連性が強いとする医学的知見を踏まえ、会社は、長時間にわたる労働により疲労の蓄積した労働者に対し、医師による面接指導を行うことを義務付けられています。
2019年4月に施行となった改正労働安全衛生法では、この長時間労働者に対する面接指導に関する内容が強化され、医師の面接指導を実施する基準となる時間数も見直されました。
改正後の基準では、「月80時間超の時間外・休日労働を行い、疲労の蓄積が認められる者」が対象者と定められており、これに該当する社員の申し出があった場合に、医師の面接指導を実施しなければならないとされています。(「高度プロフェッショナル制度適用者」や「研究開発従事者」については、これとは別の基準が適用となります。)

<面接指導を拒否した場合の対応について>

上記の通り、会社に義務付けられているのは、対象となる社員本人の申し出があった場合の面接指導の実施です。本人が面接指導を受けることを希望せず、申し出を行わなかった場合に、医師の面接指導を実施しないことは、法令違反には当たらないと考えられます。

一方で、会社は、社員が安全で健康に働けるよう配慮する、安全配慮義務を負っています。医師の面接指導制度の趣旨は、健康リスクが高まっている長時間労働者の健康状況を把握し、本人へ指導するとともに、面接指導を実施した医師の報告・意見を踏まえた措置を会社に講じさせることにあります。この趣旨を踏まえると、社員が面接指導を受けることを希望しなかったとしても、会社は、面接指導を実施するよう努める義務があるものと考えられます。

医師の面接指導に応じてもらうためには、まず、面接指導を実施することの趣旨を本人に対し丁寧に説明し、理解を求めることが重要と思われます。
また、面接指導を拒否する理由を確認し、それに応じた方法をとることも考えられます。
法令では、会社の指定した医師が行う面接指導を受けることを社員が希望しない場合、他の医師による面接指導を受けることも認めています。その場合、面接指導を実施した医師が作成した、「疲労蓄積度や心身の状況に関する報告」や「事後措置に関する意見」を証明する書面を会社に提出することが条件となります。提出する書面について、法令上の定めはございませんが、厚労省より報告書の様式例が公表されていますので、参考にされると良いでしょう。

<補足>

ここまでで述べた通り、労働安全衛生法により、月の法定時間外・休日労働時間が80時間を超えた場合には、本人の申し出により医師の面接指導を実施することが、会社に義務付けられています。加えて、労働基準法では、時間外・休日労働時間は複数月平均(2~6ヶ月平均)で80時間以内としなければならないと定められています。単月で80時間超となった場合、医師の面接指導を実施する他、翌月以降は、平均で80時間超とならないように該当者に対して指導・管理する必要がある点、ご留意ください。

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2020年6月
在宅勤務により発生した費用の会社負担について

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Q

この度、当社では在宅勤務制度の導入を考えています。
在宅勤務を導入するとなると、個人宅を業務に使用することで、様々な費用の発生が見込まれます。そこで、まずは、どのような費用を会社が負担すべきかを検討していきたいと考えています。
つきましては、在宅勤務で発生する費用で、会社が負担しなければならないと、法令で義務づけられている費用があるかをご教示ください。また、義務づけられているかどうかによらず、会社が費用負担する場合、どのような方法があるかも、併せてご教示ください。

A

在宅勤務により発生する費用で、会社が負担しなければならないと、法令上、明確に義務付けられている費用はありません。
仮に、在宅勤務することにより発生する費用を会社が負担する場合には、実際に発生した費用を実費精算する方法の他、実費ではなく一定額を支給する方法が考えられます。


<在宅勤務で発生する費用の会社負担について>

労働基準法において、会社が負担する義務が明確に定められている費用はありません。
また、厚生労働省より公開されている「テレワーク導入のための労務管理等Q&A」では、在宅勤務を含むテレワークの導入によって発生する費用の例として、以下の ①~④が例示されていますが、いずれも会社が負担しなければならないとはされていません。
①情報通信機器の費用
②通信回線費用
③文具、備品、宅配便等の費用
④水道光熱費

一方で、在宅勤務をすることにより、自宅で過ごす時間が増えますので、自宅での水道光熱費等が増え、社員の負担が増すことが考えられます。そうした社員の金銭的な負担を減らすために、会社が費用負担を行うということも一案かと思われます。
但し、在宅勤務により発生する費用は、業務で使用したものと、生活する上で使用したもの金額の切り分けが難しい場合もあります。会社が費用負担するのであれば、負担額の定め方を、労使で話し合い、明確にしておくことをお勧めします。

<会社が費用負担する場合の方法について>

在宅勤務により発生した費用を会社が負担する場合、その方法としては、発生した実費を負担する方法と、実費によらず一定額を支給する方法が考えられます。
業務で使用した金額を特定することが難しい水道光熱費などは、実費を負担するのではなく、一定額を手当として支給することで社員の負担を減らすことが考えられます。また、在宅勤務をするための環境を整えることを目的に、在宅勤務を導入する際に、予め一時金を支給することも可能です。
尚、実費精算という方法によらず会社が毎月一定額を費用負担する場合、原則としてその負担額は割増賃金の基礎に含める必要がありますので、負担方法を検討される際にはご留意ください。

<補足事項>

ここまで述べてきたように、法令では、在宅勤務により発生する費用で、会社が負担義務を負うことが、明確に定められたものはありません。会社が費用負担する場合には、何をどのように負担するのかは、労使で話し合い、明確にしておくことが良いでしょう。
尚、在宅勤務に係る費用を会社が負担することで、在宅勤務者とオフィス勤務者での費用負担の偏りが生じ、両者の間で不公平感が生じることも考えられます。費用負担にあたっては、両者の労働条件なども踏まえて検討されることをお勧めします。

=ご参考=
厚生労働省
「テレワーク導入のための労務管理等Q&A」

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2020年5月
子の看護休暇の取得日の変更や提出書類について

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Q

この度、ある社員から、子どもの体調不良のため、子の看護休暇を取得したいとの申し出がありました。当社では、これまで子の看護休暇の取得実績がなく、対応についてご相談させてください。
今の時期、当社は業務繁忙期を迎えています。今回、申し出のあった取得希望日に予定されている作業も多いことから、可能であれば、取得日をずらして休暇取得してほしいと考えています。年次有給休暇については、会社が申請された年次有給休暇取得日を変更することが認められていると聞いているのですが、子の看護休暇も会社が取得日を変更することはできるのでしょうか。
また、どうしても、その日に取得するということであれば、医師の診断書の提出を求めたいと考えていますが、法令上、問題ありますでしょうか。

A

子の看護休暇(以下、「看護休暇」)について、社員から申請された取得日を会社が別の日に変更することは、法令上、認められていません。
また、社員が看護休暇を取得するにあたって、会社が医師の診断書等の提出を求めることは、法令上、問題ありませんが、ケガや病気の程度によっては医療機関にかからないということも考えられます。書類提出を求める場合は、柔軟に対応されることをお勧めします。


<看護休暇の取得日について>

看護休暇は、ケガをしたり、病気にかかった子どもの世話、または病気の予防を図るために必要な世話(予防接種など)を行うことを目的とした、年次有給休暇とは別に定められた休暇です。
看護休暇の取得にあたっては、社員は取得する日を明示して会社に申し出をすることとされています。また、会社は、社員から申し出があった看護休暇を拒むことはできない旨、法令上定められています。従って、会社は、社員から申し出があった日に看護休暇を取得させなければなりません。
尚、年次有給休暇も、会社は社員の請求する日に与えなければならないとされていますが、事業の正常な運営を妨げる場合に限り、取得日を他の日に変更することが認められています。同様の定めは、看護休暇にはなく、社員から申し出のあった日に看護休暇を取得させることとなります。

<看護が必要となったことの証明書類について>

社員から看護休暇の申し出があった際、子どもがケガを負ったことや病気であること等を証明するための書類の提出を会社が求めることは、法令上も認められています。
但し、看護休暇を取得できるケガや病気の種類や程度には、制限が設けられていません。風邪などの医療機関にかからなくても良い程度の病気であっても取得することが可能です。そのような場合には、医師の診断書の提出を求めることは難しくなります。書面での提出を求めるのであれば、子どもが保育園や幼稚園・学校を休んだことが分かる連絡帳のコピーの提出を認めるなど、状況によって柔軟な取り扱いをすることが考えられます。
尚、会社の求めに応じず、社員が書類を提出しなかったとしても、それを理由に看護休暇の取得を認めないとすることはできない点、ご留意ください。

<補足事項>

令和2年(2020年)5月時点で、看護休暇の取得単位は、1日または半日が原則とされています。但し、令和3年(2021年)1月1日からは、育児・介護休業法施行規則の改正により、介護休暇と併せ、看護休暇を1時間単位で取得できるようにする必要があります。就業規則に記載されている取得単位は改定が必要となりますので、前広にご確認ください。

=参考=
厚生労働省リーフレット
「子の看護休暇・介護休暇が時間単位で取得できるようになります!」

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2020年4月
有期契約社員の無期転換について

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Q

契約期間が通算5年を超える有期契約社員の、無期労働契約への転換制度についてお伺いします。
この度、当社で雇用している有期契約社員の契約期間が、通算5年を超えることになったのですが、無期労働契約への転換申込みができることを、本人に伝えなければならないのでしょうか。
また、当社では、毎年4月に有期契約社員の契約を一斉更新しています。例えば、1月に採用した有期契約社員であれば、初回の契約期間は1月~3月として締結し、以降、4月~翌年3月までの1年契約を更新していく仕組みです。

今回、通算5年を迎える有期契約社員は、4年前の1月に初回契約を締結していますので、今月(4月)が4回目の更新となり、今回の契約期間中の1月に、通算5年を超えます。この場合、無期転換の申込みが可能になるのは、通算5年を超える1月からになるのでしょうか。また、無期転換の申込みがあった場合、有期労働契約期間中であっても、その時点で無期労働契約に切り替えなければならないのでしょうか。ご教示ください。

A

労働契約法により、同一の使用者(会社)との間で、有期労働契約が更新されて通算5年を超えた時は、労働者から申込むことにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できることが定められています。無期労働契約へ転換できることを、会社から本人に伝える義務は法令上定められていませんが、本人が知らなかったことでトラブルが発生することを回避するためにも、会社から周知することをお勧めします。


<無期転換申込権の周知について>

通算契約期間が5年を超える有期契約社員に対して、無期転換の申込ができることを会社が説明したり、周知したりする義務は、法令上定められておりません。然しながら、無期転換の申込権の有無をめぐる争いを避けるという観点や、人事管理を計画的に行うという観点から、周知することをお勧めします。厚労省より出されているリーフレットでは、予め無期労働契約への転換申込について、労働条件通知書へ記載しておくことにより周知する方法も挙げられています。また、有期契約社員からの無期転換の申込は、口頭でも有効とされている一方、後々のトラブル回避のためにも、書面で行うことが良いとされています。無期転換の申込ができることを伝えることと併せて、転換申込みのための書式を手交することも一案です。

<無期転換申込権の発生時期と、無期労働契約への転換時期>

無期転換申込権が発生するためには、以下の要件がそろうことが必要です。
①有期労働契約の通算期間が5年を超えていること
②契約更新が1回以上行われていること
③通算5年を超えて契約をしてきた使用者との間で、現在、有期労働契約を締結していること
但し、契約期間が5年を経過していなくても、通算契約期間が5年を超えることが確定すれば、そのタイミングで無期転換申込権が発生することとなります。例えば契約期間が3年の有期労働契約であれば、1度目の更新時点で通算契約期間が6年になりますので、4年目には無期転換申込権が発生していることとなります。
また、無期労働契約へ切り替わるタイミングは、有期契約社員からの申込みがあった時点の有期労働契約が終了する翌日とされています。

<今回のケース>

今回のケースは、今月(4月)に更新した契約の期間中に、通算5年を迎えるとのことですので、既に無期転換申込権は発生しています。速やかに、無期転換申込権が発生していることを、本人に伝えることが良いでしょう。
また、今回更新した有期労働契約期間中に、本人から無期転換の申込みがあった場合は、来年4月からの労働契約を無期労働契約として締結ください。尚、無期転換の申込みにより、申込み時点の契約期間満了の翌日から開始となる無期契約が成立したとみなされます。申込み時点の有期労働契約の満了を以って、雇止めとすることは認められませんので、ご留意ください。

=参考=
厚生労働省
無期転換ルール ハンドブック
https://muki.mhlw.go.jp/policy/handbook2018.pdf

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2020年3月
雇入れ時の健康診断の実施義務について

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Q

来月初旬に中途採用で入社する予定の者の、雇入れ時の健康診断について、お伺いします。
入社する際には雇入れ時の健康診断を実施しなければならないということは知っているのですが、来月は当社の定期健康診断も予定しています。そのため、この入社予定者については、雇入れ時健康診断を受診してすぐに、定期健康診断を受診しなければいけない状況です。
その状況を受けて、入社予定者本人から、「以前の職場で4ヶ月前に受けた定期健康診断の結果を提出することで、雇入れ時健康診断を省略できないか」という話がありました。

過去に受けた定期健康診断の結果を以って、雇入れ時の健康診断を省略することは可能なのでしょうか。また、雇入れ時の健康診断を省略することが難しいようであれば、雇入れ時の健康診断を実施した上で、今年度の定期健康診断の方を省略することができればと思いますが、そのような対応は法令上認められるのでしょうか。

A

過去に受けた定期健康診断が4ヶ月前のものである場合、その結果の提出を以って雇入れ時の健康診断を省略することはできません。
一方、雇入れ時の健康診断で受けた健診項目であれば、その受診から1年間は定期健康診断で省略することが認められています。


<雇入れ時の健康診断項目の省略について>

労働安全衛生法では、「常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、医師による健康診断を行わなければならない。」とされており、会社は雇入れ時の健康診断を実施することを義務づけられています。
但し、入社予定者が過去3ヶ月以内に受けた健康診断結果を書面で提出した場合については、その健康診断で受けた項目を雇入れ時の健康診断では省略することが認められています。従って、入社前の3ヶ月以内に、雇入れ時の健康診断と同一項目について、診断を受けたのであれば、雇入れ時の健康診断は実施を省略することが可能です。
尚、雇入れ時の健康診断と定期健康診断は、それぞれ法令で定められた項目を実施しなければなりません。定期健康診断で実施しなければならない項目は、雇入れ時の健康診断の各項目及び喀痰検査とされていますので、一見、雇入れ時の健康診断の方が健診項目が少ないように思われます。然し、定期健康診断では、医師の判断により、健診項目の一部を省略することが認められているのに対し、雇入れ時の健康診断では健診項目の省略は認められていません。その為、定期健康診断での健診項目が省略され、雇入れ時の健康診断で必要となる健診項目に足りていないケースがあり得ます。定期健康診断結果を雇入れ時の健康診断に代用する場合は、健診項目が足りているか、確認が必要です。

<定期健康診断について>

定期健康診断についても、労働安全衛生法により、「1年以内ごとに1回、定期に実施すること」が会社に義務付けられています。毎年1回、必ず実施するものですので、入社時期によっては、雇入れ時の健康診断の時期と、定期健康診断の時期が近接することとなります。
但し、雇入れ時の健康診断を実施した日から1年間は、雇入れ時の健康診断の際に受診した項目については、省略することが法令上認められています。雇入れ時の健康診断と定期健康診断の実施時期が近接している場合は、定期健康診断の受診項目の調整を検討することも一案です。

<今回のケースについて>

今回のケースでは、入社予定者が定期健康診断を受けたのは「4ヶ月前」ですので、「入社前の3ヶ月以内」という雇入れ時の健康診断に代用するための条件を満たしていません。そのため、雇入れ時の健康診断は実施する必要があります。
一方で、入社月と同月に予定している定期健康診断については、雇入れ時の健康診断で受診した項目であれば省略可能です。上記の通り、定期健康診断の健診項目は、雇入れ時の健康診断の項目及び喀痰検査とされていますが、喀痰検査は雇入れ時健康診断の健診項目にも含まれる胸部エックス線検査の結果により省略が可能です。定期健康診断で健診項目を省略する場合には、雇入れ時の健康診断での胸部エックス線検査の結果により喀痰検査の要否を確認し、定期健康診断で受けなければならない項目に漏れが出ないよう、ご留意ください。

※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。

2020年2月
本人の申告漏れにより不支給となっていた資格手当について

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Q

当社では、会社指定の公的資格を取得した社員に「資格手当」を支給しています。
この度、ある社員が、支給対象となる資格を取得していたことを会社に申請しておらず、資格手当を受給できていなかったことが判明しました。その社員が資格を取得したのがちょうど2年前ということなので、資格取得後ただちに申請していれば2年分の資格手当が支給されていたことになります。社内規程では、資格手当に関する申請手続きや支給額は定められているのですが、対象者については「所定の資格を取得した者」とあるだけで、届出の期限も定められておりません。本人の申請漏れで支給されていなかった期間であっても、申請される前まで遡って支給しなければならないでしょうか。
また、今後は申請漏れがあっても長期間の遡及はしないということを明確にしたいと考えています。「該当の資格取得者で、会社に申請した者に対して支給する」といった定めを設けることは、法令上、問題はありますでしょうか。

A

規程などで支給条件が定められている手当は、法令上、2年間は請求権が認められています。今回のケースでは、規定上、該当の資格を取得していれば、資格手当の支給対象となりますので、手当の支給は、2年前の資格取得時点まで遡及することが求められます。
また、「該当の資格取得者で、会社に申請した者に対して支給する」と定めることも可能とは考えられますが、資格手当の申請が可能となった資格取得日を基準とした方が、社員からの納得感を得やすいように思われます。


<賃金の請求権の時効について>

労働基準法において、賃金とは「名称を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払う」ものを指します。就業規則や労働契約などにより、予め支給条件が明確に定められている手当も賃金に該当します。
また、現行の労働基準法では、退職金を除く賃金に対する請求権は、2年で消滅するとされています。言い換えれば、賃金を請求する権利は2年間は保障されると言えます。従って、支給条件は満たしているが不支給となっている手当は、その支給条件を満たした時点から2年後までは請求することが可能です。
規程で支給条件が定められている「資格手当」も賃金に該当し、その支給条件を満たしてから2年間は、支給を受ける権利があるものとされます。

<手当の支給条件について>

会社は、時間外や深夜、休日に労働をさせた場合の割増賃金については支給義務を負っていますが、それ以外の手当は、法令上の定めはなく、会社で支給条件を定めることができます。そのため、資格手当について「資格取得者で、申請した者に支給する」と定め、会社宛に申請することも支給条件とすることも可能と考えられます。
但し、「資格取得者で、申請した者に支給する」と定めた場合、同じ日に同じ資格を取得した社員が複数いた場合でも、申請日が異なれば、支給開始のタイミングにズレが生じ、社員間での不公平感に繋がることが懸念されます。
また、本人からの申請も支給条件とした場合、取得後に申請が遅れた社員から「申請が遅れたのは、会社が十分に周知していなかったからだ」といった抗議を受ける可能性もあると考えられます。
一方、資格手当の支給開始時期を、申請日ではなく、資格取得日に基づいて定めた場合は、申請漏れの度に遡及支払いが発生してしまうので、会社へ申請することを支給条件とするかどうかによらず、会社は、支給に必要となる本人の手続きを周知すべきと言えます。

<注意事項:2020年4月の法改正について>

上記の通り、退職金を除いた賃金の請求権の時効は、現行の労働基準法では「2年」と定められていますが、現在予定されている民法改正を受けて、「5年」に延長される見込みです。また、この延長にあたり、経過措置として「3年」とする期間も設けられる予定です。今後の法改正状況に、ご注意ください。

=参考=
厚生労働省Webサイト内
労働基準法の一部を改正する法律案の概要
https://www.mhlw.go.jp/content/000591650.pdf

※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。

2020年1月
入社前研修実施について

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Q

当社では、4月に入社予定の新卒採用の内定者に対し、入社後の業務に必要な知識・スキルを身につけることを目的とした入社前研修を実施することを検討しています。
できるだけ早く戦力となってもらうべく、内定者には当該研修に必ず参加するよう呼びかけたいと思っているのですが、このような研修を実施するにあたっての留意点などがあれば、ご教示ください。

A

入社前研修を実施する場合は、内定者が参加有無を任意で選択する運用が適切と考えられます。参加必須の研修を実施する場合には、内定者が受講に要した時間が労働時間とみなされるリスクがある点にご留意ください。


<内定期間の取扱い>

内定期間は、「会社側の採用意思」と「内定者側の入社意思」の双方の確認が取れている状態ではありますが、正式な雇用契約を締結する前の期間です。その為、この期間は、会社が労務提供を求める権利を行使できる時期にはなっておらず、別途アルバイト等の労働契約を結ばなければ、業務を行わせることはできないとする考えもあります。

<研修時間の取扱い>

労働基準法上の労働者に該当するかについては、複数の判断基準が挙げられますが、「拘束性の有無」もその一つです。Eラーニングや通信教育、レポート提出などではなく、一定の時間・場所への集合が必要な研修では、内定者は会社による拘束を受けることとなります。その為、集合研修を実施する場合は、任意で参加することを明確にするために、内定者から同意をとることも考えられます。

また、一般的な研修・教育訓練が労働時間に該当するかについて、厚労省より出状されているリーフレットを踏まえると、会社が参加を義務付けているのであれば、入社前研修の時間も、やはり労働時間と判断されるものと考えられます。
「研修・教育訓練について、業務上義務付けられていない自由参加のものであれば、その研修・教育訓練の時間は、労働時間に該当しません。
※研修・教育訓練への不参加について、就業規則で減給処分の対象とされていたり、不参加によって業務を行うことができなかったりするなど、事実上参加を強制されている場合には、研修・教育訓練であっても労働時間に該当します。
(厚労省リーフレット「労働時間の考え方:『研修・教育訓練』等の取扱い」より)」

<今回のケースについて>

上述の通り、対象者を時間・場所的に拘束する集合研修に「必ず」参加するように呼びかけることは、労務提供を命じていると考えられる恐れがあります。
内定期間中に集合研修を実施するにあたっては、事前に内定者に参加有無を選択してもらうことが良いでしょう。
また、Eラーニング等であっても、受講しないことで入社後に注意を受ける、評価を下げられる、業務に支障をきたす、といった不利益が発生する場合は、事実上参加を強制されているとみなされ、研修受講に要した時間が業務時間とみなされる恐れがありますので、業務に直結する内容の研修は入社後に実施することをお勧めします。

<補足事項>

入社前に研修を実施することで、その後必要となる知識・スキルを習得する機会を早めに設けられる他、入社に向けたイメージアップをしたり、内定者同士での親睦を深めたりすることで内定者自身の不安解消にもつながるといったメリットが考えられます。そのため、内定者を対象に研修を実施する会社も多いようです。
一方、業務に必要な知識習得を目的とする研修は、入社後に実施することが本来の形とは言えます。新卒者の場合、学生の本分は学業にありますので、入社前研修を実施する場合は学業を阻害しないような配慮も求められます。また、不参加となった内定者に対し、内定を取り消すなど、不利な取り扱いをすることはできない点も、上記事項と併せご留意ください。

※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。


2019年

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2019年12月
育児短時間勤務の時間帯指定について

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Q

当社の所定労働時間は8時間としており、育児による勤務時間の短縮については、規程上「2時間までの短縮」を認めていますが、出社時刻や退社時刻についての定めはありません。これまでの適用対象者は全員、退社時刻を早める形での短時間勤務を希望し、会社もそれを受け入れていました。
この度、育児短時間勤務を希望する社員から、「退社時刻は1時間早められれば問題なさそうだが、その代わり出社時刻を1時間遅くすることで2時間分の短縮としたい」という申し出がありました。始業時刻直後に朝礼で業務連絡を行っていることから、出社時刻を遅らせることは、あまり望ましくないと考えているのですが、今回の申し出は認めなければならないのでしょうか。

また、子育てをしている社員に対しては、勤務時間の短縮とは別に、勤務中の中抜けを認めなければならないという話を聞きました。そのような法令があるのでしょうか。ご教示ください。

A

育児と仕事の両立のため、子育てをしている社員を対象として、勤務時間の調整を可能にする制度に「短時間勤務制度」と「育児時間」があります。
会社は、希望する社員の所定労働時間を短縮する「短時間勤務制度」を導入しなければなりません。短縮した場合に勤務する時間帯をどのように設定するかは、原則的には会社に委ねられていますが、勤務時間の短縮について、制限を設ける場合、就業規則へ一定の事項を記載する必要があり、その記載事項を超えて制限を行うことはできません。
また、ご質問の「勤務中の中抜け」とは育児時間のことと思われますが、法令上の要件に該当する社員から育児時間の請求があった場合、会社はそれに応じて、育児のための時間を与えなければなりません。

<育児短時間勤務制度について>
育児・介護休業法により、会社は、3歳までの子どもを養育する社員が、所定労働時間を短縮できる制度(短時間勤務制度)の導入を義務付けられています。
短時間勤務制度は、1日の所定労働時間を原則として6時間とする措置を含むものとしなければなりません。一方、本人が希望すれば所定労働時間を6時間とすることができるのであれば、勤務時間を5時間や7時間にすることや、隔日勤務等の所定労働日数を短縮する選択肢を併せて設けることも認められています。
また、短時間勤務制度を利用する社員に対し、どのように勤務時間を設定するかは会社の判断に委ねられています。例えば、シフト勤務の会社であれば、早番・遅番のそれぞれの時間で短時間勤務となる勤務時間を定めることも可能です。
但し、短縮した場合の勤務時間の開始・終了時刻について、一定の制限を設ける場合には、その旨を就業規則へ記載する必要があります。

<育児時間について>

「育児時間」とは、1歳未満の子どもを育てる女性が、休憩時間の他に育児のための時間を請求することを認める制度で、労働基準法により会社に義務付けられているものです。請求できる時間は、1日2回、少なくとも30分ずつですが、所定労働時間が4時間未満であれば、1日1回、30分で足りるものとされています。
育児時間を与えるタイミングは、本人の請求に応じることとされており、勤務中の中抜けも認めなければなりません。また、それぞれの条件を満たしていれば、「育児時間」と「短時間勤務制度」を併用することも認められています。尚、併用する場合、対象となる社員の子どもの年齢は、法令の定めが異なる点、ご注意ください。

<今回のケースについて>

始業時刻を遅らせることで勤務時間を短縮することは、貴社規程で定められた範囲内の内容です。上記の通り、就業規則の記載事項を超える制限を設けることはできず、今回の申し出を拒否することはできません。始業時間を遅らせることによる業務上の支障が大きいようであれば、その旨を説明した上で、本人から申請のあった短時間勤務の時間帯について変更が可能か、確認することも一案です。
また、育児時間の対象となる社員については、法令の定めに従い、社員からの請求に応じて育児時間を取得させなければなりません。(貴社規程が、法令を上回る内容であれば、そちらに従うこととなります。)

<補足事項>

短時間勤務制度は、社員ごとに希望を確認し、それに沿った措置を講じなければならないというものではありません。上記の通り、希望者が勤務時間を短縮し、6時間勤務とすることを認める制度であれば、どのような時間帯で勤務させるかは、会社に裁量が認められています。然しながら、社員が希望する形で仕事と育児を両立し、勤務できることが理想と言えますし、そのような環境を整えることで、育児期間中の離職率低下等、会社にとってのメリットとなる面も考えられます。子育てをする社員の勤務時間の検討にあたっては、「育児時間」の併用といった方法を含め、社員の状況にも十分に配慮して検討されることをお勧めします。

※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。

2019年11月
取得義務となる年次有給休暇について

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Q

2019年4月1日より、企業に「年10日以上の年次有給休暇(以下、年休)が付与される社員に対して、年5日の年休を取得させること」が義務付けられましたが、例年、概ね全社員が年5日以上の年休を取得できていたことから、当社では特に対策を講じていませんでした。しかし、今年度は取得日数が年間5日を下回る社員が出る恐れがあり、改めて現時点での社員の年休取得状況を確認しようと考えています。そこで、2点ほどご相談させてください。
当社には、いわゆる年休の他にも「慶弔休暇」などの特別休暇があります。このような特別休暇を社員が取得した場合、今回義務付けられた年5日の休暇取得に含めて良いものでしょうか。

また、年休取得状況を確認した結果、現時点で5日に満たない社員がいるようであれば、年度末までに数日の休暇取得奨励日を設けて、年休を取得させることを考えていますが、注意事項等あればご教示ください。

A

会社で独自に設定している特別休暇の取得日数を、取得義務である年5日の日数に含めることは原則として認められていません。
また、年休取得奨励日を設定することは年休取得の促進には繋がりますが、実際に年休を取得するかどうかは、ご本人の意思によります。確実に年休を取得させるということであれば、年休取得日を会社が指定する方法も考えられます。但し、会社から年休取得日を指定する場合は、就業規則に記載しなければならない事項が法令により定められている点は、注意が必要です。

<年5日の取得義務の対象となる休暇>
今回の法改正は、労基法に基づき付与される年次有給休暇の取得率向上を目的としたものです。そのため、「会社独自の休暇制度における取得日数」は「取得義務とされる年休取得日数」とは区別され、原則として年5日には含められません(例外的に、「付与日から2年経過後も、取得理由や時期を限定せず、年次有給休暇を引き続き取得可能としている」場合のように、年次有給休暇日数を上乗せするものとして付与される休暇制度であれば、会社独自のものであっても年5日の取得日数に含めることが認められています)。
従って、年5日の取得義務を満たしているか否かは、原則は年次有給休暇のみの取得日数により確認することとなります。尚、年休を半日単位や時間単位で取得することを認めている場合、半日分の年休は1回あたり0.5日として年5日に含めることが可能ですが、時間単位の年休の時間分は年5日に含めることが認められていません。

<確実な年休取得のための方法>

年次有給休暇の取得を促進する方法には、予め年休取得計画を社員に作成させたり、有給休暇取得日を設けたりすることで、取得時季の調整をしやすくし、取得を促す方法が挙げられます。
また、今回の法改正は年休の取得促進だけでなく、年5日の年休を取得させることを義務付けるものです。ご本人の申請による取得だけではこの基準をクリアすることが難しい場合、会社から年休の取得時季を指定することで、年休取得の確実性を高める方法も考えられます。但し、会社から時季指定を行う場合には、就業規則に以下の2点を記載している必要があります。
①時季指定の対象となる労働者の範囲
②時季指定の方法等

尚、時季指定にあたっては、一方的に会社が取得日を指定するのではなく、できる限り社員の希望に沿った取得時季になるよう、ご本人の意見を聴取しなければならないとされている点、ご留意ください。

<注意事項>

法改正により、年10日以上の年休が付与される社員に対して、年5日以上の年休を取得させなかった場合、法違反として取り扱われ、罰則(30万円以下の罰金)を科されることがあるとされています。年度末になって、基準を満たすだけの年休を取らせることが困難な状況にならないためにも、まずは当年度の年休取得が5日に満たなくなりそうな社員がいないか、前広に確認することをお勧めします。
また、上述の通り、会社が時季指定を行うためには、法令上定められている事項が就業規則に記載されている必要があります。時季指定に関する記載が就業規則にないと、会社が時季指定を行うことはできず、社員本人が自主的に年休取得するよう、個別に働きかけを行うことになります。年5日に満たなくなりそうな社員がいた場合に、休暇取得奨励日の設定に加えて、会社が時季指定を行うかについてもご検討ください。

※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。

2019年10月
テレワークにおける労働時間の管理について

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Q

当社では、社員からの要望もあり、現在、テレワーク勤務の導入を検討しております。導入にあたっては、オフィス勤務の社員とのコミュニケーションが可能な環境整備(会社ネットワークに接続可能なPCや、携帯電話など)を前提として考えています。
一方で、テレワークを導入した場合、物理的に上司の目が届かない状況となります。また、就業時間中に自宅近所での所用を済ませるようなこともあるかと思います。そうした通常勤務との違いを踏まえると、テレワークを導入した場合には、実際に働いた時間に関わらず「1日分の所定労働時間」といった時間数を勤務したものとみなす、という運用が適しているように思うのですが、そのようにすることで問題ないでしょうか。

A

会社は、社員の労働時間を適正に把握し、適切に管理する責務があるとされており、それは社員がテレワークを行う場合も同様です。一定の要件を満たす場合に限って、所定の労働時間を勤務したとみなす制度(「事業場外みなし労働時間制」)の適用が認められますが、可能な限り労働時間の適正な把握に努める義務があります。
また、自宅近辺での所用のための外出など、テレワーク勤務中に業務から離れるようなことを認めるのかについては、会社としてルールを定めることをお勧めします。

<テレワーク時の労働時間の管理>
会社は、社員の労働時間を適正に管理するため、労働者の労働日ごとの実際の始業・終業時間を確認し、記録することが法令上、義務とされています。テレワークにより、通常のオフィス勤務とは異なる就業環境で勤務する場合であっても、実際の始業・終業時間に基づき労働時間を管理することが原則となります。
「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月策定。以下「労働時間の適正な把握に関するガイドライン」)によれば、労働時間の確認方法として、使用者が自ら現認する方法の他、客観的な記録による方法が挙げられています。テレワークにおいては、上司の目による確認は難しいので、パソコンの使用時間の記録などを客観的な記録として活用することが考えられます。その他、自己申告による方法として、メールや電話といった情報通信機器で始業・終業の報告をさせる方法や、スケジュール管理ツールで特定の時間帯にどのような業務を行っているのかを共有させる方法もありますが、自己申告制で労働時間を把握する場合は、上記「労働時間の適正な把握に関するガイドライン」を踏まえた措置を講じる必要がある点、ご留意ください。

尚、テレワーク勤務者について、上司の指揮監督が及ばない為に、労働時間の把握が困難である場合には、「事業場外みなし労働時間制」の適用が考えられますが、以下の2要件のいずれも満たすことが必要です。

【事業場外みなし労働時間制の適用要件】
①情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
②随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと

<就業時間中に業務から離れた時間の取扱い>

テレワークでは、勤務中に、私用などで業務から離れる時間を認めて欲しいという希望が社員から挙がりやすいかと思いますが、物理的に上司の目が届かないことから、このような時間をどのように扱うのか、会社として慎重に検討した上で、予めルールを定めておくことが必要と考えられます。
例えば、そのような対応が望ましくないということであれば、「テレワーク勤務中に私用による外出は禁止(休憩時間に限る)」といったルールを定めることも一案です。一方、就業時間中に業務から離れることを認めるのであれば、そのような時間について、その開始・終了時間を報告させて休憩時間と取扱った上で、労働者の求めに応じて、その時間数に応じて始業時刻を繰り上げ、または終業時間を繰り下げることや、休憩時間とはせずに時間単位の年次有給休暇として取扱うことも可能です。
但し、始業・終業の時刻を変更する場合には、その旨を就業規則に記載しておくことが必要です。また、時間単位の年次有給休暇とする場合も、労使協定を予め締結しておかなければならない点、ご注意ください。

<今回のケース>

今回のケースで検討されているテレワークは、パソコンや携帯電話などにより、常時コミュニケーション可能な状況を想定されていますので、「事業場外みなし労働時間制」を導入する要件は満たしていないようです。テレワークを導入した場合も、原則の通り、労働時間を適正に把握する方法を検討することとなります。


=参考=
厚生労働省Webサイト内
テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/content/000553510.pdf

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000149439.pdf

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2019年9月
海外で医療機関にかかった場合の保険給付

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Q

わが社には、単身赴任の海外駐在員がいます。この度、日本国内に残っている家族が、夏休みを利用して社員の駐在地へ旅行した際、ケガをしてしまい、現地の病院にかかったのですが、それにより発生した医療費について、お伺いします。
この家族は海外旅行保険に加入しておらず、海外の病院では健康保険証も利用できない為、海外駐在員本人が全額を立替えており、家族の帰国後に精算したいとの問い合わせがありました(この家族は、海外駐在員の扶養に入っています)。健康保険に加入していれば、海外で発生した医療費であっても健康保険からの給付は受けられるのでしょうか。
また、これまで海外駐在員や海外出張者が、現地で医療機関にかかるようなケースがなかったのですが、そのような社員が業務中にケガをして現地で病院にかかった場合、日本国内と同様に労災保険の給付を受けられるのでしょうか。

A

健康保険加入者が海外で医療機関にかかった場合も、加入する健康保険組合に申請手続きを行うことで、「海外療養費」の給付を受けることが可能です。
また、海外出張者の病気やケガが、業務上の災害によるものと認定されれば、労災保険の給付を受けることができる点は、日本国内と同様です。一方、海外駐在員は労災保険の対象ではなく、労災保険による給付を受けるためには特別加入の手続きが必要です。

<海外療養費について>
通常、日本国内で医療機関にかかった場合、発生した医療費のうち、自己負担分のみを患者が支払い、残りは加入する健康保険から支払われます(これを保険給付と言います)。然しながら、海外の医療機関の場合、たとえ保険証を提示したとしても、保険給付を受けられません。患者は一旦全額を支払った上で、後日、加入する健康保険組合に申請手続きを行うことで、海外で支払った医療費の一部を海外療養費として受けることができます。
尚、海外療養費は、治療内容のレベルや治療費が国ごとに異なることから、日本国内の健康保険で定めた治療費を基準に算定した額が給付の対象となり、支払った費用の全てが給付の対象になるとは限りません。また、申請の際に提出する書類として、治療内容の証明書が必要になる等、日本国内で保険給付を受ける場合とは異なる点があることは注意が必要です。

<海外事業における労災給付について>

業務上の災害により病気やケガを負った場合(例えば、業務中に転倒して骨折する等)、日本国内では労災保険の給付を受けられます。海外出張者(日本国内の会社に在籍する社員で、商談や会議等の為に海外に滞在している者)も同様に、業務上の災害と認められれば、労災保険による給付を受けることができます。
一方、海外駐在員(出向や転勤により、海外の会社に在籍する社員)の場合、原則として労災給付の対象とはされていません。これは、労災保険が、日本国内にある会社に適用され、その会社に就労する労働者が給付の対象となる為で、海外の会社に派遣されている海外駐在員は、原則として駐在する国の災害補償制度の対象とされています。
但し、国によっては災害補償制度の適用範囲や給付内容が充実していない場合もあることから、「労災保険の特別加入制度」により、以下の海外駐在員については、所轄の都道府県労働局の承認を受けることで、労災保険の適用が認められます。


【特別加入できる海外派遣者(海外駐在員)】
①日本国内の事業主から、海外で行われる事業に労働者として派遣される人
②日本国内の事業主から、海外にある中小規模の事業(※)に事業主等(労働者ではない立場)として派遣される人
(※)事業が中小規模であるか否かは、現地国における当該企業の規模で判断されます。
③独立行政法人国際協力機構など開発途上地域に対する技術協力の実施の事業(有期事業を除く)を行う団体から派遣されて、開発途上地域で行われている事業に従事する人

<今回のケース>

ご相談頂いた、海外駐在員の家族の医療費については、健康保険組合へ申請することで、海外療養費の給付を受けることが可能です。申請にあたっては、治療内容の証明書など、現地に滞在している期間中に取得した方が良いと思われる書類もありますので、必要な書類は早めの確認をお勧めします。


<補足事項>

今回のケースは海外駐在員の家族の一時的な渡航中の医療費とのことでしたが、海外駐在員、海外出張者の業務外でのケガや病気についても、海外療養費による給付が可能です。然しながら、上記の通り、海外療養費は日本国内での治療を基準に給付額が決定されますので、必ずしも支払った費用全てをカバーするものではありません。海外療養費の給付を受けても、日本国内で病院にかかった場合に比較して、本人の負担額が高額になることが十分にあり得ます。渡航期間が長期となれば、海外でのケガ・病気が発生する可能性も高まりますので、本人の負担が高額になるケースに備え、会社での費用の一部負担や、海外駐在員を対象とした医療保険への加入等も対応として考えられます。


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2019年8月
休憩時間を一斉に与えない場合について

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Q

当社の就業規則では、休憩時間を「正午から午後1時までの1時間」と定めているのですが、一部の部署で、その時間帯や前後に顧客対応が必要になることがあり、休憩時間が1時間に満たないような場合があるようです。
そこで、休憩を取得できる時間帯の定めを廃止し、1時間の休憩の開始時刻を各自の裁量に委ね、本人の業務都合に合わせて休憩をとらせることを検討したいのですが、そのような変更に必要となる手続きと、留意点についてご教示ください。

A

休憩時間は、一部業種を除き、一斉に付与することが原則となります。適用除外となる業種以外の会社において、休憩時間を一斉に与えない場合は、労使協定の締結が必要です。
また、休憩時間の付与については、法令上の定めもあります。休憩時間を開始するタイミングを社員に委ねることは可能ですが、適正に休憩時間を与えられるような仕組みを合わせてご検討ください。

<基本事項>
労働基準法では、労働者が一定の時間を就労する場合は、始業直後や終業直前にあたらない所定労働時間中に、実際の労働時間の長さに応じて、一斉に休憩時間を与えることを義務づけています。
但し、以下の業種については、休憩を一斉に付与した場合に業務の円滑な運営に支障をきたすと考えられることから、交代制で休憩を与えることが認められています。その為、これらの業種に該当する会社では、就業規則で業務運営にあたって合理的と考えられる休憩時間の与え方を定めることが可能です。

【休憩時間の一斉付与の適用除外となる業種】
①運輸交通業
②商業
③金融・広告業
④映画・演劇業
⑤郵便通信業
⑥保健衛生業
⑦接客娯楽業
⑧官公署の事業

また、上記の業種に該当しない場合であっても、労使協定を締結すれば、休憩時間を一斉に与えなくても良いとされています。その場合、労使協定においては、以下の点を定める必要があります(尚、この協定の行政官庁への届出は必要ありません)。

【一斉休憩の適用除外の為の労使協定において定めるべき事項】
a)一斉に休憩を与えない労働者の範囲
b)一斉に休憩を与えない労働者に対する休憩の与え方

<今回のケース>

まずは、貴社が一斉休憩の原則の適用除外となる業種に該当するかをご確認ください。適用除外となる業種に該当する場合は、就業規則を変更し、「休憩をとる時間帯は労働者の判断に委ねる」旨を記載することで、ご検討中の休憩時間の付与方法を変更することが可能です。
また、適用除外となる業種に該当しない場合は、上記の通り、必要事項を定めた労使協定の締結が必要です。

一方、1時間の休憩をどのタイミングで取るのかを各自の裁量に委ねることについては、慎重に検討されることをお勧めします。社員がそれぞれ個別に休憩を開始するとなった場合、業務の忙しさから、つい休憩時間を取り損ねてしまった社員がいても、上位者を含め周囲が気づきにくくなります。法定の休憩時間を与えることは使用者の義務とされていますので、休憩時間を取れていない社員がいるような場合、労働基準法違反を問われることにもなります。休憩時間を開始するタイミングを社員に委ねる場合であっても、例えば休憩時間を「11時から14時の間で1時間取得すること」と定め、遅くとも13時には休憩を開始するよう職場で声かけをする等、適正な休憩を与えられる方法をご検討ください。


※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。

2019年7月
出張時の休日の取扱いについて

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Q

当社では、出張を要する業務が多く、出発日が休日であるケースや、休日を含む出張日程が組まれるケースもあるのですが、こうした休日に対しては、休日勤務としての賃金は支給せず、所定の日当のみを支給しております。
一方で、例えば遠方への出張で、休日に半日かけて移動した場合、時間単価によって計算される移動時間分の賃金は日当を上回りますので、日当ではその移動時間の賃金をまかないきれていないこととなります。
休日の出張に対して、休日勤務として賃金を支給しない場合、法令違反にあたるのでしょうか。

A

休日の出張に対し、休日勤務として賃金を支給するかどうかは、その休日に移動のみ行ったのか、打合せ等の勤務時間も含まれていたのかにより異なります。出張のための移動時間は労働時間にあたらないとされていますので、休日が純粋な移動日であった場合、休日勤務としての賃金の支給義務はありません。また、出張期間中の休日も、勤務時間が含まれなければ、休日勤務として扱わなくても法令違反にはあたりません。
尚、出張の日当は、休日の賃金見合いを支給しているものではありません。休日の出張に対する賃金の支給有無とは別に、会社の定めに従い支給する必要があります。

<労働時間の基本事項>
「労働時間」とは、使用者の指揮命令下にある時間のうち、労務から完全に解放される休憩時間等を除いた時間を指します。
例えば、通常の勤務日においては、始業時間から終業時間までの業務時間(時間外労働が発生した場合は、その時間も含む)が使用者の指揮命令下にある労働時間です。これに対し、通勤時間は、移動中の時間を労働者が自由に利用できますので、使用者の指揮命令下にはない、労働時間外の時間とされています。

<出張時の労働時間>

出張における労働時間は、例えば出張先で商談に要した時間等、使用者に命じられた特定の業務遂行のために費やされた時間であると考えられます。一方、それに付随する移動時間は、通常の勤務日における通勤時間と同様、労働時間にはあたりません(但し、物品の運搬を目的とした出張で、盗難や損傷のないように、移動中も物品を監視するといった指示が使用者からなされているような場合は、移動時間も労働時間と判断されます)。
出張日程に休日が含まれる場合も、その休日に使用者の指示命令により業務を遂行した場合は労働時間となりますが、業務指示がなく、休日を出張先で過ごしているという状態であれば、労働時間には該当しません。


<出張日当について>

一般的に、出張日当は、「出張による交通費や宿泊費等の諸経費以外で、通常とは異なる場所で勤務することによる社員の出費(食事代や電話代といった諸雑費)を補填する」という趣旨で支給されるものと言えます。
出張日当の支給要件には法的な定めはなく、会社ごとに定めることとなります。但し、業務遂行の有無に関わらず、出張期間中は上記のような諸雑費が発生しますので、業務遂行のない休日を賃金の支給対象外とする場合でも、出張日当は支給するという会社も多いようです。


<補足事項>

上記の通り、休日に移動のみ行った場合、法令上は休日勤務には当たらないとされています。然しながら、移動のみで業務遂行はなくても、出張者には身体的な負荷も生じますので、過度に休日を出張移動日にさせないといった配慮が望ましいでしょう。また、やむを得ず出張移動日となる休日が続き十分な休養をとれないような状況では、有給休暇の取得を促す等、別途、休養の機会を与えることも一案です。


※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。

2019年6月
不採用者の応募書類の保管について

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Q

採用活動で入手した履歴書等の応募書類の取扱いについて、お伺いします。
わが社では、採用した社員の応募書類は、入社承諾書等の採用時に提出される書類と併せて退職後3年まで保管することとしており、不採用者の応募書類もそれに倣い、採用活動終了から3年間保管して廃棄しています。この度、この取り扱いについて、「不採用者の書類であれば、保管する必要はないのではないか」、また「廃棄せず、本人に返却すべきなのではないか」という声が社内で上がりました。つきましては、不採用者の応募書類を一定期間保管する必要はないのか、また、会社から本人宛に返却しなければならないのか、法定のルールがあればご教示頂けますようお願い致します。

A

会社と雇用契約を結ぶことがない不採用者より提出された応募書類は、労働基準法で保存すべきと定められている書類にはあたりません。一方で、結果的に採用に至らなかった応募書類であっても、個人の氏名を始めとした個人情報が記載されています。個人情報保護法には保管期限や、個人への返却義務までは定められていませんが、採用活動終了後は遅滞なく情報を破棄する等の対応をとることが望ましいと考えられます。

<使用者が保存すべき書類について>
労働基準法109条では、使用者が保存すべき書類を「労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類」と定めていますが、雇用関係にない者の書類はこれには含まれていません。

尚、同条ではそれぞれの書類は、以下を起算日として3年間の保存を義務付けています。
・労働者名簿:労働者の死亡、退職又は解雇の日
・賃金台帳:最後の記入をした日
・雇入又は退職(解雇を含む)に関する書類:労働者の退職または死亡の日
・災害補償に関する書類:災害補償を終わった日
・賃金その他労働関係に関する重要な書類:その完結の日

<個人情報の破棄について>

個人情報保護法により、個人情報は「利用する必要がなくなったときは、当該個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならない」と定められています。従い、選考を目的に収集した採用応募書類は、採用活動の終了により利用する必要がなくなったと考えられ、その時点で廃棄もしくは本人へ返却することが適切であると言えます。


<注意事項>

選考の結果、不採用となった方の応募書類を本人へ返却しなければならないとする法令上の定めはございません。然しながら、不採用者や応募辞退者等、採用に至らなかった応募者が、応募書類の返却を望むことも考えられます。応募者から書類返却の希望があった場合に、会社が既に書類を廃棄していて返却に応じられないようなケースでは、トラブルに発展する可能性も考えられますので、応募書類を一括廃棄される場合は、不採用の連絡を行う際に「書類は責任をもって会社が廃棄する」旨を通知することをお勧めします。


※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。

2019年5月
フレックスタイム制の清算期間の延長について

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Q

わが社では、清算期間を1ヶ月とするフレックスタイム制を導入しているのですが、月ごとの業務繁閑の波が激しく、繁忙期には時間外労働を36協定の上限内に抑えることに苦労するほどの業務量となるのに対し、閑散期には時間外労働がほぼ不要な状況となっています。2019年4月から清算期間の上限を3ヶ月まで延長することが認められたと聞いています。わが社でも清算期間を3ヶ月に見直すことで、繁忙期と閑散期で労働時間を調整し、年間を通した時間外労働の削減につなげられるのではと考えていますが、検討にあたっての注意事項等あれば、ご教示頂けますようお願い致します。

A

フレックスタイム制における清算期間を3ヶ月に延長することで、月を跨いだ労働時間の調整が可能となりますので、貴社のように業務量が1ヶ月を超えて変動するような会社では、閑散期に実労働時間を短縮し、清算期間を通して時間外労働の削減が期待できます(特定の月の実労働時間が所定労働時間を満たさない場合であっても欠勤とせず、清算期間内での調整が可能となります)。

但し、1ヶ月を超える清算期間を設定する場合であっても、時間外労働の管理は清算期間ごとだけでなく、月ごとでも必要であることや、フレックスタイム制に関する労使協定について、作成だけでなく届出も義務となること等、新たに手間が生じる面もございます。また、フレックスタイム制を導入している場合においても、改正労働基準法上の時間外労働の上限規制は適用されます。

<フレックスタイム制の基本事項>
フレックスタイム制は、一定の清算期間について予め総労働時間を定め、その範囲内で、労働者が日々の始業・終業時刻を個々の裁量で決定できる制度です。
フレックスタイム制を適用した場合、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えても、ただちに時間外労働とはならず、清算期間における法定労働時間の総枠を超えて、実際に労働した時間数が時間外労働となります。その為、業務の繁閑に応じて労働時間の調整を行うことが可能になり、従業員の生産性向上や時間外労働の削減が期待されます。清算期間の上限は、これまで「1ヶ月」とされていましたが、法改正により「3ヶ月」に延長されたことで、月を跨いだ労働時間の調整が可能になっています。
(※尚、上記の「時間外労働」とは法定労働時間を超えて行われた残業時間を指します。会社が法定労働時間とは異なる所定労働時間を定めている場合、所定労働時間を超え、法定労働時間の範囲で行われた残業に対する割増賃金の取扱いは会社の定めに従うこととなります)

<清算期間が1ヶ月を超える場合の留意事項>

フレックスタイム制における清算期間が1ヶ月を超える場合には、以下の時間数が時間外労働としてカウントされます。
① 清算期間における、法定労働時間の総枠を超えた労働時間
② 1ヶ月ごとに週平均50時間を超えて労働した時間

②は1ヶ月単位で清算しなければならず、①の時間数には含めずに別管理する必要があります。また、深夜労働や法定休日勤務も1ヶ月単位での時間管理が必要です。


尚、清算期間の長さによらず、フレックスタイム制の導入には以下(a)(b)の2点が手続きとして必要となりますが、清算期間が1ヶ月を超える場合には(c)が追加で必要となります。
(a) 就業規則等への規定
(b) 労使協定で所定の事項を定めること
(c) 所轄労働基準監督署長宛の労使協定の届出(清算期間が1ヶ月を超える場合のみ)


<補足事項>

フレックスタイム制における清算期間が1ヶ月を超えて設定された場合、本件のように業務量が1ヶ月を超えて変動するようなケースだけでなく、従業員の裁量で月を跨いだ業務量を調整できるということであれば、社員の生活上の都合に合わせた繁閑調節ができ、働きやすさの向上、ワークライフバランスの改善がメリットとして考えられます。一方で、時間外労働の管理の煩雑さや、最大3ヶ月の長期間にわたる労働時間配分を社員の自主性に委ねることで、かえって時間外労働が増加してしまうようなリスクも考えられますので、それらも踏まえた十分な検討が重要となります。


=参考=
厚労省WEBサイト内:
フレックスタイム制のわかりやすい解説
https://www.mhlw.go.jp/content/000476042.pdf


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2019年4月
同一労働同一賃金への対応について

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Q

パートタイム労働法(※1)の改正により、2020年4月1日(中小企業の場合は2021年4月1日)から、同一企業内において、正社員と非正規社員の間で、基本給や賞与などあらゆる待遇について不合理な待遇差を設けることが禁止されるとのことで、対応を検討しています。現在、弊社では正社員と有期契約社員を雇用しており、両者間の待遇差の主たるものは「通勤手当」の支給有無です。弊社の正社員と有期契約社員では、「従事する業務の内容・責任の程度」や「配置の変更範囲(正社員のみ転居を伴う異動の可能性がある)」が異なるため、有期契約社員に対して「通勤手当」を支給しないことは合理的な待遇差であり、法令上問題が無いと認識しておりますが、相違ないでしょうか。

A

2018年6月1日の最高裁判決(※2)で、通勤に要する交通費を補填する趣旨で支給される「通勤手当」について、正社員と非正規社員の間に待遇差を設けることは不合理であると判断されていますので、有期契約社員に対しても、正社員と同条件で「通勤手当」を支給するといった対応が必要になると考えられます。尚、有期契約社員の所定勤務日数が正社員よりも少ないような場合に、有期契約社員の「通勤手当」が、同一通勤経路の正社員よりも両者の所定勤務日数の差に応じて少額であることは、合理的な待遇差であると考えられます。

<留意事項>
現行法においても、労働契約法第20条に、『有期契約労働者の労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と無期労働契約を締結している労働者の労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、職務の内容等の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない』旨が定められており、貴社の現状(正社員に支給している「通勤手当」を有期契約社員に支給していない)は、この労働契約法第20条違反にあたると考えられます。労働契約法は労使の個別の合意を原則としている性質上、労働基準監督署による行政指導等はありませんが、民法上、当該労働契約が無効になることや、不合理な待遇差が認められた手当等について、非正規社員から、本来支給すべきであった手当相当額の損害賠償請求が行われる等の恐れがありますのでご留意ください。

<その他の対応>

「通勤手当」の他にも、正社員と有期契約社員の間に待遇差がある場合は、以下の手順でご確認、ご対応頂くことをお勧め致します。
① 正社員と有期契約社員で待遇差を設けている項目、及び待遇差を設けている理由の確認
② その待遇差が「合理的であること」を説明できるかを検証
③ その待遇差が「合理的であること」が説明できない項目については、待遇差を是正する。宜しければ、厚労省が発行している「パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書」(※3)もご参照ください。


=参考=
(※1)法改正に伴い、パートタイム労働法の名称は「パートタイム・有期雇用労働法」に変更となります。

(※2) 2018年6月1日の最高裁判決(ハマキョウレックス事件)
運送会社で働く契約社員(有期雇用労働者)に対して月額3,000円の「通勤手当」が支給されていたが、同契約社員と交通手段及び通勤距離が同じ正社員に対しては月額5,000円を支給すると定められていたことについて、正社員と非正規社員の間で、通勤に要する交通費を補填する趣旨で支給される「通勤手当」に待遇差を設けることは不合理であり、労働契約法20条に違反すると判断されました。
【判決理由】
  労働契約に期間の定めがあるか否かによって通勤に必要な費用が異なるわけではない。
  正社員と有期契約社員の職務内容・配置の変更範囲が異なることは、通勤に必要な費用の多寡に直接関係はない。


(※3)「パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書」
厚労省WEBサイト内: https://www.mhlw.go.jp/content/000468444.pdf


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2019年3月
勤務間インターバル制度の導入

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Q

2019年4月の法改正により、「勤務間インターバル制度」の導入が企業の努力義務になると聞きました。「勤務間インターバル制度」が前日の終業時刻から翌日の始業時刻までの間に、一定の休息時間を設ける制度であることは理解しているのですが、制度導入に向け、企業としてどのような検討が必要となるのでしょうか。ご教示をお願いします。

A

ご認識頂いている通り、「勤務間インターバル制度」の導入は、あくまでも企業の努力義務とされておりますので、19年4月時点で本制度を導入していなくとも法令違反とはなりません。ですが、同制度の導入は長時間労働の改善や労働者の健康維持に向けた睡眠時間の確保等、様々なメリットがあるとされていますので、自社の実態に合わせ、同制度の対象者、インターバル時間数、定められたインターバル時間数の確保によって翌日の出勤時刻が所定の始業時刻を過ぎてしまう場合の勤怠の取り扱い等について、以下を参考にご検討ください。


<制度の対象者>

事業所や職種を特定する、モデル部門を指定して先行実施する等、最初は対象者を限定して導入することも考えられます。また、職務内容の違いにより、全社員共通のルールで導入することが難しい場合には、部署ごとにインターバル時間数を設定するといったことも可能です。


<インターバル時間数の目安>

既に「勤務間インターバル制度」が導入されているEU諸国では、24時間ごとに最低でも連続「11時間」の休息時間を設けることが義務付けられています。それに倣い「11時間」に設定することも考えられますが、(※)厚生労働省のWEBサイト内では、同制度の導入事例としてインターバル時間数を「9時間(=導入事例の中では最短)」に設定している企業が紹介されており、この「9時間」~「11時間」がインターバル時間数の目安になるかと思います。もちろん「11時間超」で設定することでも問題ありませんが、自社の実態に合わせて現実的に確保可能なインターバル時間数を設定することをお勧め致します。


<勤怠の取り扱い>

終業時刻が遅くなり、定められたインターバル時間数を確保すると翌日の出勤時刻が所定の始業時刻を過ぎてしまう場合の取り扱いとしては、以下のようなものが考えられます。
① 出勤時間が所定の始業時刻を過ぎ、1日の勤務時間が所定労働時間よりも短くなった場合でも、その時間を勤務したと見做し給与を支給する
② 時差出勤制度を利用し、翌日の始業・終業時刻をともに繰り下げる
③ フレックスタイム制度を利用し、翌日のフレキシブルタイム内で始業時刻を繰り下げる
④ 労働者に時間単位の年次有給休暇を取得してもらう
⑤ 遅れた時間分は欠勤扱いにするが、懲罰やマイナス評価の対象にはしない
尚、②の方法を取る場合は就業規則に時差出勤が出来る旨の記載(=時差出勤制度の導入)が、③の方法を取る場合には、就業規則で始業・始業時刻の決定を従業員に委ねる旨の記載及び労使協定の締結が、④の方法を取る場合には、就業規則年次有給休暇を時間単位で取得できる旨の記載及び労使協定の締結が必要になりますのでご留意ください。
また、上述のように翌日の出勤時刻を後ろ倒しにするだけではなく、「翌日の出勤時刻が後ろ倒しになるような残業を極力控えるように社内通知する」ことで、終業時刻が遅くならないように注意喚起することも考えられます。


=参考=
(※)厚労省 WEBサイト内
<勤務間インターバル制度の導入事例>
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/interval/case_study.html


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2019年2月
「国民の祝日」及び「国民の休日」の増加の影響について

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Q

弊社の就業規則では、年間休日数を120日と定め、かつ、①日曜日②土曜日③「国民の祝日に関する法律」に定める休日④年末年始(12月29日~1月3日)を休日と定めています。2019年度(2019年4月~2020年3月)については、新天皇が即位される影響で「国民の祝日」及び「国民の休日」が増えることから、上記①~④に該当する日の全てを休日とすると年間休日数が120日を超えてしまい、就業規則内で矛盾が生じている状態です。
このような場合、「年間休日数120日」と「上記①~④に該当する日を休日とする」のどちらの規定が優先されるのでしょうか。ご教示をお願いします。

※上記①~④の休日数の合計が120日に満たない年度については、別途、年間休日数が120日になるように休日の指定を行っています。

A

就業規則内の規定間で矛盾が生じている場合は、原則として、労働者に有利な規定が適用されることとなりますので、貴社の場合も年間休日数が多い(=労働者に有利な)「上記①~④に該当する日を休日とする」の規定が適用されます。また、年間休日数が増加することにより、年間所定労働時間が減って賃金の時間単価が上昇する等、実務面にもいくつか影響が生じますのでご留意ください。
尚、就業規則内で矛盾が生じている状態は、決して望ましい状態とは言えませんので、矛盾が生じない記載に変更することをお勧めします。

<就業規則の効果及び内容の変更>
2019年度における実際の年間休日数が就業規則で定める120日を超えたとしても、これは労働者にとって有利な取り扱いとなるので問題ありません。一方で、現状の就業規則の記載のままで実際の年間休日数を120日とすることは、就業規則の「上記①~④に該当する日を休日とする」を適用した場合の年間休日数を下回る(=労働者にとって不利な取り扱いとなる)ため出来ません。
仮に2019年度の年間休日数を120日のままにしたいということであれば、就業規則の内容を「年間休日数120日」、
原則として・・・・・上記①~④に該当する日を休日とする」と変更することが考えられます。このような内容ですと、例外的に土日祝日の中で出勤日を設け、年間休日数が120日となるような調整も可能です。但し、当該変更は従業員にとって不利益な変更となりますので、変更に当たっては原則として従業員の同意が必要になります。
※従業員の同意が得られない場合であっても、変更後の就業規則を従業員に周知させ、かつ、就業規則の変更が、従業員の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、変更が認められます。

<時間外勤務手当の時間単価の上昇>

1年の総所定労働時間や1ヶ月当たりの平均所定労働時間に基づき、時間単価を計算している場合、年間休日数が増加すると1年の総所定労働時間及び1ヶ月当たりの平均所定労働時間が減少し、時間外勤務手当の時間単価が上昇する(=1時間当たりに支払われる時間外勤務手当が増加する)ことになりますのでご留意ください。
尚、時間単価の算定基礎となる所定労働時間を毎年固定している会社では、実際の所定労働時間がそれよりも短い年度は、労働者に不利な取り扱いとなりますので、時間単価を実際の所定労働時間に基づいて計算することをお勧め致します。


<その他留意事項>

就業規則で土日祝日の全てを休日と定めている場合、2019年度は4月27日(土)~5月6日(月)までが10連休となります。休日に業務の都合で社員が自宅等で電話対応を行うような場合でも勤務時間として取り扱う必要があります。10連休の間、労働時間管理の対象となる社員がどうしても休日勤務をせざるを得ない状況が発生することが想定されるようでしたら、適切な労働時間管理が行えるように、『休日に自宅等で電話対応を行った場合は、労働時間を記録して上長に報告すること』を社内周知する等の対応が望ましいです。


※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。

2019年1月
資本金の増資に伴う働き方改革関連法の適用時期の変化

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Q

弊社では現在、2019年4月1日から順次施行される働き方改革関連法への対応を進めています。この度、会社の信用力強化を目的とし、資本金を現在の5,000万円から1億5,000万円に増資することを検討していますが、これにより働き方改革関連法への対応に何か影響がありますでしょうか。ご教示をお願いします。
尚、弊社は、従業員数150名程度(パート・アルバイトを含む)で卸売業に分類されます。

A

貴社の業種・従業員規模・現在の資本金ですと、労働基準法上の「中小企業」に該当しますが、資本金を1億5,000万円に増資すると「中小企業」に該当しなくなります。その場合、「中小企業」に対して適用猶予措置が設定されている働き方改革関連法の一部の法改正について、適用猶予措置を受けることが出来なくなる(=適用時期が早まる)ので、資本金の増資と併せて、前倒しで法改正への対応が必要となります。

<基本事項>
人事労務関連の法的義務は、従業員数のみを基準にして生じるものが多く(「衛生管理者の選任」や「障がい者雇用」等)、資本金の増資によって生じるものはあまり多くありませんが、上述の通り、資本金の増資により労働基準法上の企業区分が「中小企業」に該当しなくなる場合には、働き方改革関連法の一部の法改正について、適用猶予措置を受けることが出来なくなりますので注意が必要です。
中小企業に該当するか否かは、「資本金の額または出資の総額」と「常時使用する労働者数」で判断されます。具体的には、下記の図表1の通り、業種ごとに設定されている(1)と(2)の条件のどちらか一方を満たす場合に「中小企業」に該当することとなります。
また、働き方改革関連法の内、「中小企業」に対して適用猶予措置が設定されている項目は、図表2の通りです。

【図表1】
業種 「中小企業」に該当する条件(下記のいずれかを満たすこと)
(1)
資本金の額または出資の総額
(2)
※常時使用する労働者数
小売業 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
上記以外の業種 3億円以下 300人以下

※常時使用する労働者数は、常態として使用される労働者数であり、パートやアルバイトのような雇用形態であっても、臨時的に雇い入れられた場合でなければ、常時使用する労働者数に含む。

【図表2】

法改正内容 施行日
中小企業以外
(大企業)
中小企業
時間外労働の上限規制 2019年4月1日 2020年4月1日
月60時間超の時間外労働に対する割増賃金
(50%以上)の支給
適用済み 2023年4月1日
不合理な待遇差を解消するための規程の整備 2020年4月1日 2021年4月1日
労働者に対する待遇に関する説明義務 2020年4月1日 2021年4月1日

<補足事項>

働き方改革関連法では、「中小企業」に該当するか否かに拠らず、2019年4月1日から様々な法改正が適用されることとなります。中には、『一定日数の年次有給休暇の確実な取得』や『労働時間の適切な把握』等、対応に時間を要するものございますので、お早めに自社の対応方針をご検討頂くことをお勧めします。


※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。


2018年

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2018年12月
執行役員の契約形態について

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Q

昨今、取締役会における意思決定の迅速化や取締役の監督機能の強化を目的として、執行役員制度を導入し、取締役と執行役員で、経営における「監督機能」と「執行機能」を分離している企業が増えていると聞いています。そこで、弊社でも同様の目的から執行役員制度を導入することとしました。現在、制度導入に向け、執行役員の役割や権限、報酬、契約形態等を検討している段階ですが、社内の一部からは、「従業員身分を持たせたまま、執行役員に就任させるのが良いのではないか」との声が挙がっています。役員と聞くと、従業員身分ではないイメージがありますが、従業員身分を持たせたまま、執行役員に就任させることは可能なのでしょうか。ご教示をお願いします。

A

執行役員本人との契約にあたっては、従業員身分を持たせたまま(=雇用契約を維持したまま)、執行役員に就任させることも可能ですし、従業員との雇用契約を解除し、当該執行役員との間に委任契約を締結するような形態をとることも可能です。一般的に前者を「雇用型執行役員」、後者を「委任型執行役員」と呼びます。それぞれの特徴及び主なメリット・デメリットは以下の通りとなりますので、貴社の実態に応じて、執行役員との契約形態についてご検討下さい。


雇用型執行役員
【特徴】
自社の従業員である執行役員の労務提供に対して、賃金を支払う雇用契約を締結する。
当該従業員は、執行役員としての地位を失った後でも、従業員としての地位は失われない。
【メリット】
執行役員としての地位を失った後でも、従業員としての地位が失われないことが、当該執行役員の安心感につながる。
【デメリット】
当該執行役員が期待された成果を上げられない場合でも、契約を解除(解雇)することが難しい。

委任型執行役員
【特徴】
当該執行役員との間に、執行業務の委任契約を締結する。執行役員に就任する際に、会社との雇用契約が解消される。(=従業員としての地位を失う)
【メリット】
当該執行役員が期待された成果を上げられない場合、会社から委任契約を解除することが出来るため、当該執行役員の執行責任者としての意識をより高めることが期待できる。
【デメリット】
執行役員へ就任する際に、会社との雇用契約が解消される為、場合によっては、執行役員への就任をためらってしまう恐れがある。

<留意事項>
税法上では、会社法上の役員に加え、「法人の使用人以外の者で、その法人の経営に従事している者」「同族会社の使用人のうち、一定の要件を満たす特定株主等で、その会社の経営に従事している者」も役員とされています。このように会社法上では役員に該当しないが、税法上では役員に該当する者をみなし役員と呼びます。
執行役員は会社法上の役員には該当しませんが、当該執行役員が取締役会に出席し、会社の意思決定に強い影響力を持っている場合等に、このみなし役員に該当する可能性があります。その場合、雇用型・委任型のいずれであっても、当該執行役員に支払われる報酬が損金算入できないこともありますのでご留意ください。

※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。

2018年11月
時間外労働の上限規制について

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Q

労働基準法の改正により、2019年4月から36協定で定める時間外労働に罰則付きの上限が設けられると聞きましたが、弊社では毎年10月1日から1年更新で36協定を締結しているため、2019年4月は、2018年10月に締結した36協定の有効期間内となっています。このような場合、既に締結済みの36協定を破棄し、改正内容に即した36協定を2019年4月から締結し直す必要があるのでしょうか。ご教示をお願いします。

A

既に締結済みの36協定の有効期間に2019年3月31日が含まれている場合、その有効期間の終了日までは改正内容に即した36協定を新たに締結し直す必要はありません。次に締結する36協定から新労働基準法の適用対象となります。また、中小企業については、新労働基準法の適用が2020年4月からとなりますので、自社がいつから適用対象となるかも併せてご確認下さい。

<基本事項>
労働基準法では、労働時間の上限を1日8時間、週40時間(=法定労働時間)と規定しています。法定労働時間を超えて労働させる場合には、時間外労働の上限を一定の期間ごとに労使協定で締結し、所轄の労働基準監督署長へ届け出る必要があり、この労使協定を36協定と呼んでいます。
現行法では、臨時的な特別の事情があれば、年間で6ヶ月まで、36協定で定めた1ヶ月あたりの時間外労働の上限を超えて、労使当事者の自主的協議のもと長時間労働とならない範囲内で限度なく時間外労働をさせることができましたが、今回の法改正により、臨時的な特別な事情があって労使が合意する場合でも、以下の範囲内でしか、時間外労働及び休日労働を行わせることができなくなります。
① 1ヶ月間で時間外労働及び休日労働の合計が100時間未満
② 対象期間中、2ヶ月から6ヶ月のそれぞれの期間における時間外労働及び休日労働の1ヶ月あたりの平均時間が80時間以内
③ 1年間で時間外労働は720時間以内
本改正は、2019年4月(中小企業については、2020年4月)から適用されますが、既に締結済みの36協定の有効期間に2019年3月31日が含まれている場合には、次に締結する36協定から新労働基準法の適用対象となります。

<補足事項>

本改正により、企業には社員の時間外労働・休日労働を最小限にとどめることが求められるのと同時に、社員の時間外労働及び休日労働時間数を正確に把握する必要が生じています。時間外労働の削減のためには、「ノー残業デーの設定」や前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息を確保する「勤務間インターバル制度」の導入、社員の時間外労働及び休日労働時間数を正確に把握するためには、労働時間管理システムの導入等が有効と考えられますので、貴社での導入をご検討下さい。


=参考=
厚労省 WEBサイト内
<36協定の記載例>
https://www.mhlw.go.jp/content/000350328.pdf


<36協定の記載例(特別条項付き)>
https://www.mhlw.go.jp/content/000350329.pdf

※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。

2018年10月
年5日の年次有給休暇の取得義務について

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Q

2019年4月1日の労働基準法改正によって企業に「年5日の年次有給休暇(以下、年休とする)取得をさせる義務」が生じるとのことですが、これは全社員に対して、期初の段階で年5日の年休の時季指定が必要になるということなのでしょうか。ご教示をお願いします。尚、弊社では、以前から年休の取得率向上に取り組んでいることもあり、概ね全ての社員が年間で5日以上の年休を取得しています。

A

本改正の趣旨は、「労働者が1年の間に必ず5日以上の年休を取得する」ことであるため、労働者が自ら5日以上の年休を取得した場合は、会社からの時季指定は不要となります。
ですので、年休の付与時には会社からの時季指定を行わず、年休付与日から1年が経過する前に年間の年休取得が5日に満たないことが予期される社員に対し、年休の取得を促すもしくは、社員に年休の取得時季の意向を聴取した上で、会社から時季指定を行う等の対応も可能です。

<基本事項>
年次有給休暇は、原則として労働者自らの申出により取得させることとなっていますが、「上司に年休取得を言い出し辛い」「自分が休むことで周りに迷惑が掛かってしまう」等の理由から、その取得率が低いことが社会的に課題とされています。そこで、2019年4月1日から、全ての企業において、年10日以上の年休が付与される労働者に対して、年休の日数のうち年5日については会社が時季を指定して取得させることが義務付けられることとなります。但し、労働者自らの申出により取得した日数や、労使協定で取得時季を定めて計画的に付与(=年次有給休暇の計画的付与制度)した日数については、上記5日から控除することが出来ます。

<補足事項>

本改正により、企業には年次有給休暇管理簿を作成し、常日頃から社員の年休取得状況を確認することで、年間の年休取得が5日に満たないことが予期される社員を早期に発見、年休の取得を促す、もしくは社員に年休の取得時季の意向を聴取した上で、時季指定を行うことが求められます。それだけではなく、社員が年休を取得し易い職場環境を整えることも重要ですので、計画的に年休取得日を割り振ることが出来る「年次有給休暇の計画的付与制度」や年休を1日単位ではなく、1時間や半日単位で取得することが出来る「時間単位・半日単位の年次有給休暇制度」を導入することも併せてご検討ください。
尚、2019年4月1日以降、年10日以上の年休が付与される労働者に対して、年間5日以上の年休を取得させなかった企業は30万円以下の罰金に処せられることとなりますのでご注意ください。

※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。

2018年9月
インターンシップの実施における留意点等について

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Q

弊社では、入社前に抱いていた職務へのイメージと入社後の職務内容とのミスマッチを理由に若手社員のモチベーションが低下していることを課題に感じています。そこで、入社前の学生に、弊社の職務内容をより具体的に理解してもらえるよう、インターンシップの実施を検討しているのですが、その企画・実施に当たり留意事項等あればご教示をお願いします。

A

インターンシップの企画・実施に当たっては、その内容等によって、参加学生が労働者に該当する可能性があることに留意が必要です。仮に、参加学生が労働者に該当する場合は、自社で雇用している労働者と同様の取り扱いを行う必要があります。また、自社の採用活動にとって有意義なインターンシップを実施するために、人事部門だけではなく、適宜、現場の社員の協力を仰ぎながら、インターンシップの実施期間・時期や当日のプログラム内容をご検討頂くことをお勧め致します。

<基本事項>
インターンシップとは、「在学中・卒業直後の学生が、自分の選考や将来のキャリアに関連した就業体験を一定期間行うこと」と定義されており、昨今、優秀な人材の確保や、入社前に抱いていた職務へのイメージと入社後の職務内容とのミスマッチの防止等を目的として、学生に向けたインターンシップを実施する企業が増加しています。

<法令上の留意事項>

一口にインターンシップと言っても、その実態から判断して、参加学生が労働者に該当する場合には、最低賃金を上回る賃金の支払いや労働時間管理等、自社で雇用している労働者と同様の取り扱いを行う必要があります。一方で、参加学生が労働者に該当しない場合、当該学生には労災保険が適用されませんので、インターンシップ中の事故への対応等について、予め検討する必要があります。

インターンシップに参加する学生が労働者に該当するか否かの判断基準については、以下のように行政通達がなされています。

「一般に、インターンシップにおいての実習が、見学や体験的なものであり、使用者から業務に係る指揮命令を受けていると解されないなど使用従属関係が認められない場合には、労働基準法第9条に規定される労働者には該当しないものであるが、直接生産活動に従事するなど当該作業による利益・効果が当該事業場に帰属し、かつ、事業場と学生の間に使用従属関係が認められる場合には、当該学生は労働者に該当するものと考えられ、また、この判断は、個々の実態に即して行う必要がある。」(平成9年9月18日 基発636号)

<インターンシップのプログラム内容例及び企画時の留意事項>

インターンシップ当日のプログラム内容としては、「業界や自社ビジネスに関する説明」「実際のビジネスシーンを想定したケーススタディ及び参加学生に対する社員からのフィードバック」「社員の業務の一部を経験する」「実際に仕事をしている社員に同行・同席する」「職場の見学」等が考えられます。また、参加学生が就職後の仕事内容や職場環境をより具体的に理解することが出来るプログラム内容とするために、企画時から人事部門の社員だけではなく、実際に学生を受け入れ、指導することが想定される部門の社員の協力を仰ぎながら、ご検討頂くことをお勧め致します。

※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。

2018年8月
定年再雇用者の無期転換について

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Q

弊社では、60歳で定年を迎えた社員を、65歳の誕生日までを限度として1年更新の有期契約で再雇用していますが、昨今の採用における売り手市場化を受け、後継となる人材の確保に苦戦しているため、もうすぐ65歳になる定年再雇用者を65歳以降も従前と同様の条件で雇用し続けたいと考えています。この場合、65歳の誕生日の翌日からの契約で、有期労働契約が通算して5年を超えるため、対象の社員に無期転換申込権が発生するという理解で宜しいでしょうか。

A

ご認識の通り、有期労働契約が通算して5年を超えるため、対象の社員の方に無期転換申込権が発生します。但し、その方は、貴社で定年に達した後、引き続いて雇用される有期雇用労働者(定年再雇用者)ですので、特例として、「適切な雇用管理に関する計画」を作成し、都道府県労働局長の認定を受けることで、無期転換申込権が発生しないこととなります。

※1 会社が認定を受ければ、それ以前から再雇用している社員についても、無期転換申込権が発生しないこととなります。但し、既に無期転換申込権を行使している労働者からその権利が消滅することはありませんのでご注意ください。

※2 高年齢者雇用安定法に規定される特殊関係事業主(所謂グループ会社)で定年を迎え、自社で再雇用した社員についても、自社が認定を受けることで無期転換申込権が発生しないこととなります。

<基本事項>
労働契約法改正によって、有期契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申し込みにより無期雇用に転換できるようになりました。但し、特例として、「適切な雇用管理に関する計画」を作成し、都道府県労働局長の認定を受けた事業主の下で、定年に達した後、引き続いて雇用される有期雇用労働者(定年再雇用者)については、その事業主に定年後引き続いて雇用される期間は、無期転換申込権が発生しません。
上記の認定を受けるためには、「第二種計画認定・変更申請書」を都道府県労働局長に届け出る必要があります。主な認定要件は以下の2点です。
1. 継続雇用の高年齢者に対する適切な雇用管理措置を計画していること
具体的には、高年齢者雇用推進者の選任や職業訓練の実施、健康管理・安全衛生の配慮などの措置の中から1つ以上実施していること。
2. 届け出時点で、高年齢者雇用確保措置を実施していること
具体的には、65歳以上への定年引上げ、もしくは継続雇用制度を導入していること。

<補足事項>

本特例は全ての高年齢労働者に適用される訳ではありません。(所謂グループ会社以外の)他社を定年退職し、その後自社に雇用された労働者及び定年に達しない時点で無期雇用から有期雇用に転換した労働者は、特例の対象にはならず、有期労働契約が通算して5年を超えた時点で無期転換申込権が発生します。

上記のように特例の対象とならない労働者が60歳を過ぎてから無期雇用となった場合、本人が退職を希望する、もしくは自社の規程の解雇事由に該当することがない限り、当該労働者を終身雇用しなければならない可能性もありますのでご注意ください。終身雇用が発生しない運用やルールには、以下のようなものがありますのでご確認ください。

1. 特例の対象とならない労働者の契約期間が通算して5年を超えないように、予め契約期間の上限を5年以内に定める

2. 特例の対象とならない労働者が60歳を過ぎてから無期雇用となった場合の定年を別途定める

=参考=
厚生労働省 WEBサイト内
「高度専門職・継続雇用の高齢者に関する無期転換ルールの特例について」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000075676.pdf

※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。

2018年7月
派遣社員の組織単位の異動について

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Q

2015年9月に労働者派遣法が改正され、一人の派遣社員につき同一の組織単位で起用できる期間の上限が3年になったので、弊社でも、今後の派遣社員起用の方針を検討しているところです。現在使用している派遣社員が、経費処理等の複雑な社内ルールにも精通し、円滑に業務をこなしてくれているので、派遣期間が3年を過ぎた後も、別の組織単位に異動させて継続的に使用したいと考えています。具体的には、営業第1部に営業事務の担当として派遣されもうすぐ3年が経とうとしている派遣社員を、同じ事業所内の営業第2部に異動させ、異動前と同じく営業事務の担当として働いて欲しいと考えていますが、この取り扱いで問題はないでしょうか。

<補足情報>
営業第1部と営業第2部は、取り扱う商材は同じですが、その上長、所属員及び取引先が異なります。

A

ご認識の通り、派遣先の事業所における同一の組織単位に、同一の派遣労働者が3年を超えて派遣就業することは出来ません。どうしても当該派遣社員に、同一事業所内で3年を超えて派遣就業してもらいたいということであれば、現在、派遣就業している組織単位から別の組織単位に異動させることが考えられます。別の組織単位に異動させたか否かは、会社の組織構成、異動前後の組織の業務内容や指揮命令系統等によって総合的に判断されることとなります。本件のように異動前後で当該派遣社員の営業事務という職種に変更がなくても、営業第1部と営業第2部で指揮命令系統に変更があること、加えて、営業第2部の取引先が営業第1部と異なることで、これまでとは異なる知識・スキルを求められる業務に携わるのであれば、当該派遣社員のキャリアアップが見込まれることから、別の組織単位に異動したと判断される可能性はあります。ただし、労働者派遣契約において、派遣就業先となる組織単位が定められておりますので、派遣社員を別の組織単位に異動させようとする場合には、事前に派遣元に連絡してください。

<基本事項>
2015年9月に労働者派遣法が改正され、派遣社員が同一の組織単位で働ける期間が3年に制限されました。(ただし、当該派遣社員が派遣元で無期雇用されている場合や、当該派遣社員が60歳以上の場合等には、3年の上限が適用されません。)この規制は、派遣就業を望まない派遣社員がその組織単位の業務に長期間にわたって従事することによって、キャリアアップが図られず、派遣就業に固定化されてしまうことの防止を目的としています。
また、ここで言う「組織単位」とは、平成27年の厚生労働省の省令にて以下のように定義されています。
「名称のいかんを問わず、業務の関連性に基づいて派遣先が設定した労働者の配置の区分であって、配置された労働者の業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にあるものが当該労働者の業務の配分及び当該業務に係る労務管理に関して直接の権限を有するもの。」
すなわち、別の組織単位に異動させたか否かは、異動前の組織単位と異動後の組織単位の業務内容や指揮命令系統等の違いによって判断されることとなります。

<補足事項>

労働者派遣契約において定めなければならない事項には、具体的な派遣就業の場所及び組織単位、当該派遣社員が従事する業務内容、指揮命令者が含まれています。つまり、派遣先が派遣元に無断で、派遣社員を別の組織単位に異動させてしまうと、契約違反となるので、注意が必要です。

現在使用している派遣社員を別の組織単位に異動させたい場合には、派遣元企業に連絡し、派遣契約の変更もしくは、再締結の手続きを行ってください。

ただし、組織単位を変更しようとする場合、必ずしも現在使用している派遣社員が、そのまま派遣されるとは限りません。労働者派遣契約において、派遣先からの要請に対して、だれを派遣するかは派遣元が決定する事項とされているため、別の組織単位の業務が現在使用してる派遣社員の希望に合わなければ、他の方が派遣される場合もあります。また、派遣先が特定の派遣社員を指名する行為を派遣先が行わないようにする努力義務が労働者派遣法において課されていますので、ご留意ください。

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2018年5月
障がい者の法定雇用率について

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Q

弊社は今まで、障がい者を雇用していなかったのですが、平成30年4月1日から障がい者の法定雇用率が2.2%に引き上げられた関係で、最低1人の障がい者を雇用する必要が生じました。現在、採用活動を進めており、弊社から見て、スキルや経験等は申し分のなさそうな人材から応募がありましたが、その応募者は1日6時間×4日(週所定労働時間24時間)の勤務を希望しています。このような短時間勤務の障がい者を採用した場合でも、障がい者の実雇用率の算定の際に、1人としてカウントしても良いのでしょうか。

A

1週間の所定労働時間が20時間以上、30時間未満の短時間労働者については、障がい者の実雇用率算定の際に、1人をもって「0.5人」とカウントされます。尚、対象者が重度身体障がい者又は重度知的障がい者である場合には、短時間労働者であっても、1人をもって「1.0人」とカウントされます。また、精神障がい者の職場定着を支援することを目的として、平成30年4月1日から、精神障がい者である短時間労働者についても、一定の要件(※)を満たす場合に限り1人をもって「1.0人」とカウントされます。


※ 「雇入れから3年以内、または精神障害者保険福祉手帳取得から3年以内」かつ
  「平成35年3月31日までに、雇入れられ、精神障害者保険福祉手帳を取得」
  (上記を満たしていても「1.0人」としてカウントされない例外があるので注意が必要)

<基本事項>
『障害者の雇用の促進等に関する法律』により、全ての事業主には、その常用労働者数に対して法定雇用率(2.2%)以上の割合で障がい者を雇用する義務があります。常用労働者数が45.5人以上の事業主は、少なくとも1人以上の障がい者を雇用しなければなりません。
『障害者の雇用の促進等に関する法律』における常用労働者とは、1年以上継続して雇用される者(見込みを含む)を指し、契約社員であっても、1年以上継続して雇用される場合には(見込みがある場合も含む)常用労働者に含まれますのでご注意ください。(『労働安全衛生法』における「常時使用する労働者」と異なり、「常用労働者」に派遣社員は含まれません。)尚、障がい者の実雇用率を算定する際と同様に、常用労働者数を算定する際も、所定労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者は1人をもって「0.5人」とカウントされます。
法定雇用率が未達成の事業主に対しては、ハローワークから行政指導が行われ、行政指導が行われたにも関わらず、障がい者の雇用状況に改善が見られない場合には、企業名が公表される可能性もあります。
さらに、常用労働者数が100人超の事業主で法定雇用率が未達成の場合には、納付金が課せられます。また、納付金を支払ったとしても、法定雇用率の達成が免除されるわけではなく、上記と同様に、障がい者の雇用状況に改善が見られない場合には、企業名が公表される可能性もありますのでご留意ください。

<本件の場合>

今回、応募してこられた障がい者の方が、重度身体障がい者、重度知的障がい者、精神障がい者(一定の要件を満たす場合に限る)でない場合、その方を採用したとしても、貴社は法定雇用率を満たしていません。その場合、貴社が法定雇用率を満たす為には、週所定労働時間が30時間以上の障がい者を1人採用するか、あるいは、今回の応募者の方に加えて、障がい者である短時間労働者をもう1人採用する必要があります。

また、常用労働者数が45.5人以上の事業主は、毎年6月1日現在の障がい者の雇用に関する状況をハローワークに報告する義務がありますのでご留意ください。毎年報告時期になると、常用労働者数が45.5人以上の事業所に報告用紙が送付されますので、必要事項を記載の上でハローワークに報告してください。尚、電子申請によって報告することもできます。

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2018年4月
年次有給休暇の時間単位付与制度の導入について

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Q

働き方改革の影響で、弊社でも柔軟な働き方について社内検討を進めています。その中で、一部の社員から「通院や役所での手続き等、1日や半日の年次有給休暇の取得までは要さない短時間の所用に柔軟に対応できるよう、年次有給休暇の時間単位付与の制度(以下、時間単位年休制度)を導入してほしい」との希望が寄せられており、弊社としても前向きに検討しています。そこで、本制度を導入するにあたり、制度の設計や行政への手続きについて注意事項等あればご教示頂けますようお願い致します。

A

時間単位年休制度の導入により、社員が1日や半日の年次有給休暇取得までは要さない短時間の所用に、柔軟に対応することが出来るようになるだけではなく、延いては、年次有給休暇の消化率の向上が期待できます。制度導入にあたっては、労使協定の締結や就業規則の改定が必要です。

<基本事項>
時間単位年休とは、労働者に対し、年に5日を限度として時間単位で年次有給休暇を与えることが出来る制度です。本制度の導入にあたっては、以下の対応が必要です。
労使協定の締結
就業規則の改定
 労使協定で規定する項目は以下の4つになります。
① 時間単位年休の対象労働者の範囲
② 時間単位年休の日数
③ 時間単位年休の1日の時間数
④ 1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数
また、「休日・休暇に関する事項」は就業規則の絶対的記載事項に当たりますので、年次有給休暇を時間単位で付与する旨及び、労使協定で定める事項に関しても、就業規則に記載しておく必要があります。
上記4項目の具体的な設定方法は以下の通りです。
①制度の対象となる労働者の範囲を定めます。その範囲は、すべての労働者である必要はなく、時間単位年休を取得させることによって、事業の正常な運営が妨げられる場合には、「工場のラインで働く労働者を対象外とする」等、社内の一部社員を適用対象外とすることも可能です。尚、「育児・介護を行う労働者のみを対象とする」等、時間単位年休の取得目的により、対象労働者の範囲を限定することは出来ないのでご注意下さい。
②時間単位年休として付与する年次有給休暇の日数を、年間5日以内の範囲で定める必要があります。尚、前年度からの年次有給休暇の繰越しがあっても、当該繰越し分を含めて年間5日以内の範囲で定める必要があります。
③年次有給休暇1日分が何時間分の時間単位年休に相当するかを、貴社の所定労働時間を基に定める必要があります。その際、所定労働時間に1時間に満たない端数がある場合には、それを1時間単位に切り上げて計算します。(例:1日の所定労働時間が7時間30分の場合の時間単位年休は、30分切り上げて8時間分となる)
④時間単位年休の取得単位は特段の定めがない限り、1時間とされていますが、1時間以外の時間を取得単位(2時間・3時間、等)とする場合には、その時間数を定める必要がありますのでご留意ください。1時間未満(例:30分)を取得単位にはできないので、ご注意ください。

<補足事項>

上述の通り、時間単位年休の導入は、社員の柔軟な働き方の実現や年次有給休暇の取得率の向上に繋がると考えられます。一方で、会社としては、就業時間中の中抜けが発生し、就業管理が煩雑になるといったデメリットもございます。また、精算期間内での繁閑に応じ、労働者自らが労働時間を調整することが出来るフレックスタイム制度とは違い、時間単位年休は時間外労働の削減効果は薄いと考えられます。社員の柔軟な働き方の実現という面では、時間単位年休だけではなく、フレックスタイム制度や、時差勤務制度の導入も有効な方法となっていますので、貴社の実態に合わせて導入をご検討ください。

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2018年3月
退職者の年次有給休暇の取り扱いについて

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Q

一か月後に退職を予定している社員から、「これからの1週間(5営業日)は通常通り勤務をし、残りの約3週間(15営業日)は年次有給休暇を消化したい」との申し出がありました。1週間の勤務では後任への業務の引継ぎが間に合わない為、会社としては、退職予定日までの最後の1週間(5営業日)に限って、年次有給休暇の取得を認めたいと考えております。業務に支障がある場合には、社員の年次有給休暇の取得予定日を会社が変更しても良いと聞いたことがあるのですが、このような対応で問題はないでしょうか。

A

社員からの年次有給休暇の申請を会社が拒否することは出来ないため、社員から申請された年次有給休暇については日数の短縮等も認められず、全て取得させる必要がございます。一定の要件に該当する場合には、会社は年次有給休暇の取得時季を、社員から申請された時期とは別の時季に変更する権利を有しますが、今回の場合には適用されません。

<基本事項>
労働基準法第39条で、年次有給休暇は労働者が指定する時季に与えることとされています。ただし、労働者から指定される時季に年次有給休暇を与えることが「事業の正常な運営を妨げる場合」には、使用者は、その時季を変更する権利を有しています。これを時季変更権と呼んでいます。ただし、会社が時季変更権を行使したとしても、労働者からの年次有給休暇の申請を拒否できるのではなく、あくまでも労働者から指定された時季とは別の時季に年次有給休暇を与える必要がございます。
「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するか否かは、その労働者の担当する作業の内容、その労働者の所属する事業所における作業の繁閑、代行者の配置の難易度等諸般の事情を考慮して客観的に判断すべきものとされています。さらに使用者は、労働者が指定した時季に年次有給休暇を取得できるように、相応の配慮をすることが求められており、常態として業務が忙しい場合や、慢性的に人手が足りていない場合には、「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当しないと考えられます。
また、退職予定の労働者が、退職予定日の直前の期間を指定して年次有給休暇を申請した場合は、それが「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当し、会社が時季変更権を行使しようとしても、労働者が指定した時季とは別の時季(=退職予定日以降)に年次有給休暇を与えることは実質的に不可能であり、退職予定日を超えた時季変更権の行使はできないとされています。

本件の場合

本件について、上述の通り会社は時季変更権を行使することが出来ないので、原則として当該社員からの年次有給休暇の申請を全て認めることになります。
仮に、後任への業務の引継ぎを理由に、どうしても当該社員に出勤してほしいという場合には、本人にその旨を説明し、退職日を遅らせることや退職時に未消化の年次有給休暇を買い上げることを提示する等、当該社員と個別に交渉の上、あくまで当該社員が任意に引継ぎに必要な日数を出勤するように、同意を得るよう努めることとなります。
※ 会社による年次有給休暇の買い上げは、基本的には金額設定等によらず労働基準法違反となりますが、例外的に、退職時に未消化分の年次有給休暇を買い上げることは認められています。
また、今後このような事態が発生しないためにも、会社として以下のようなことについてもご検討ください。
① 社員の年次有給休暇の取得を促進し、退職時に多くの年次有給休暇の未消化分が発生しないように努める。
② 就業規則に「退職にあたっては、所定の引継ぎを完了させなければならない」という趣旨の記載をし、退職時には業務の引継ぎを滞りなく行う必要があることについて、社員に意識付けをする。

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2018年2月
派遣社員の派遣可能期間

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弊社では複数の派遣社員が働いているので、2015年9月に労働者派遣法が改正され、一人の派遣社員につき同一の組織単位で起用できる期間の上限が3年になったということは認識しています。弊社における派遣社員期間上限の3年が近くなってきているのですが、同一の派遣社員について、同じ事業所の中でも異なる組織に異動させることが出来れば、引き続き同一の事業場で派遣社員として活用出来るという認識で間違いないでしょうか。もしくは、必ず正社員として雇用しなければならないのでしょうか。

A

派遣労働者の個別単位での派遣可能期間は3年が上限で、同じ派遣社員を同一組織で3年以上派遣社員として起用することはできませんが、必ずしも正社員として雇用しなければならないものではございません。また、同様に事業所単位の期間上限も3年ですので、こちらも併せて対応頂く必要がございます。

<基本事項>
労働者派遣法は、労働力が求められる場所へ労働者を派遣することで労働力を適正に供給し、かつ派遣労働者の雇用の安定や福祉の増進など、派遣労働者の保護を目的とするものです。
2015年9月に労働者派遣法が改正され、派遣社員が同一の組織単位で働ける期間が3年に制限されました。ただし、以下の場合には、当該期間上限が適用されません。
(1) 当該派遣労働者が派遣元企業で無期雇用されている場合
(2) 当該派遣労働者が60歳以上の場合
(3) 一定の期間内で当該業務が完了することが予定されている場合(事業の開始、廃止等)
(4) 1ヶ月の業務日数が10日以下である場合
(5) 派遣先で、産前産後休業、育児休業、介護休業を取得する労働者の業務を担う場合
これらの場合は、例外として3年の上限がありませんので、当該派遣社員の該当有無についてご確認ください。
期間上限が適用される派遣社員の対応については以下の選択肢が考えられますので、個別に対応方法をご検討ください。
●派遣元企業に当該派遣社員の直接雇用を申し込む。(この場合、期間の定めのある契約社員等としての雇用も可であり、必ずしも正社員と同じ雇用条件にする義務はない。)
●当該派遣社員を別の組織に異動させる。
●自社での起用を終了し、別の派遣先を紹介する。
次に、事業所単位での期間制限についても対応が必要です。本改正では、同一の事業所で3年を超える期間継続して労働者派遣を受けることが禁止されたため、2015年9月以降継続して派遣社員を雇用している企業については2018年9月に事業所の派遣可能期間の制限を受けることとなります。引き続き当該事業所で派遣社員の受け入れが必要な場合は、当該期間制限に抵触することとなる最初の日の1か月前の日まで(意見聴取期間)に、過半数労働組合もしくは従業員代表に意見を聞くことにより、3年を上限として派遣可能期間を延長することが出来ます。3年後に更に延長する場合も、同様の手続きが必要です。

本件の場合

まず、当該派遣労働者が個人単位の派遣可能期間の制限を受けない場合は、同一組織で3年を超えて継続起用することが可能です。制限を受ける場合は、既にご検討頂いている通り、組織を越えて異動させることで継続して起用することが可能です。また、事業所単位でも、上述の意見聴取期間に意見聴取を実施し、派遣可能期間を延長することが併せて必要になりますのでご対応ください。
当該派遣法の改正には、一定年数働いた戦力を派遣先企業で直接雇用することを促し派遣労働者の雇用安定を図る意図があります。正社員雇用以外にも、契約社員・嘱託社員としての雇用や新たな派遣先の紹介という選択肢もあります。また、当該派遣社員が派遣元企業で無期雇用になった場合は、派遣可能期間の上限は適用外となり、貴社にて派遣社員として継続起用が可能です。上述した法令趣旨と貴社の現状を踏まえ、対応をご検討ください。

※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。

2018年1月
常時50人以上の労働者を使用する事業場での安全衛生管理体制

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Q

弊社の従業員数は、派遣社員を含め、まもなく50人を超える可能性が高くなっています。常時使用する労働者数が派遣社員を含め50人以上の場合、弊社の業種(通信サービス業、営業職・事務職のみ)であっても衛生管理者を選任しなければならないことを認識しているのですが、衛生管理者については、社内の従業員のなかから指名さえすれば、それ以上の対応は不要でしょうか。あるいは、指名にともなって行政関連の手続等が必要でしょうか。

A

衛生管理者は、当該事業場に属して勤務する労働者のなかで、労働安全衛生法12条1項で定められた資格を満たす者から選任し、遅滞なく選任報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。また、派遣社員も含め常時50人以上の労働者を使用する事業場では、安全衛生について、他にも対応が必要な事項がございます。

<基本事項>
衛生管理者は、労働災害を防止し、労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進するという労働安全衛生法の目的を達成するために、一定規模の事業場ごとに選任するものです。
衛生管理者は、以下の免許又は資格いずれかを有する者のうちから選任しなければなりません。(労働安全衛生法12条1項)
(1) 都道府県労働局長の免許を受けた者
   (第1種衛生管理者免許、第2種衛生管理者免許※、衛生工学衛生管理者免許)
(2) 医師又は歯科医師
(3) 労働衛生コンサルタント
(4) その他厚生労働大臣の定める者 ※労働安全衛生規則第10条
   (保健体育教科についての学校教諭免許を有する者で、学校に在職する者、等)
衛生管理者は、その事業場に専ら属して勤務する者を選任しなければならないため、当該事業場に上記資格を持つ社員がいらっしゃる場合、その方を任命頂き、遅滞なく所轄労働基準監督署長に届け出る必要がございます。上記資格を持っている社員がいらっしゃらない場合は、事業場が設置されているエリアによりますが、少なくとも月に1回は第1種衛生管理者免許および第2種衛生管理者免許試験が実施されておりますので、下記安全衛生技術試験協会のホームページをご確認頂き、衛生管理者免許取得を希望する社員自ら申し込みのうえ、速やかに資格の取得をしてください。
●安全衛生技術試験協会ホームページ:http://www.exam.or.jp/index.htm
このようにして選任された衛生管理者は、衛生に係る技術的業務の管理を担い、少なくとも毎週1回作業場を巡視し、従業員に対し有害のおそれがあるときは直ちに必要な措置を講じ、労働災害防止のために努めることとなります。
その他、常時50人以上の労働者を使用する事業場では、安全衛生管理体制について、対応が必要な事項があります。
まず、上述の衛生管理者の選任だけでなく、産業医の選任および衛生委員会の設置が必須となります。衛生委員会は、選任した衛生管理者や産業医を委員として指名し、毎月1回以上開催し、議事録を3年間保存するよう定められています。また、従業員の定期健康診断の結果について、所轄労働基準監督署長へ報告書を提出することも必要となります。
ちなみに、常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場でも、衛生推進者(もしくは安全衛生推進者)の選任が必要です。衛生管理者と異なり、衛生推進者を選任しても労働基準監督署長への報告義務はありませんが、当該衛生推進者の氏名を関係労働者に掲示等の方法で周知させなければなりません。
常時雇用する労働者数が50人を超えるか否かにより、事業者が対応しなければならない項目の数は大きく異なりますが、労働安全衛生法第1条に法令の目的として記載されている「労働者の安全と健康の確保、快適な職場環境の形成促進」は、常時雇用する労働者が50人未満の事業場であっても求められていることに変わりはありません。
更に補足となりますが、常時使用する労働者数が200人を超える場合は2人以上の衛生管理者を選任しなければならず、常時1,000人を超える労働者を使用する事業所では少なくとも1人を専任とする義務があるなど、労働者の人数に応じて選任数等対応も変わりますので、都度確認が必要です。

本件の場合

貴社の場合、業種や常時使用する労働者数から、衛生管理者の選任が必要となることはご認識の通りですが、選任対象となりうる社員には上述の通り条件がありますので、当該事業場のなかで上述の資格を満たす社員から選任してください。また、常時50人以上の労働者を使用する事業場には、上述の通り、衛生管理者の選任以外にも安全衛生管理体制として必須となる項目がありますので、漏れなく対応頂けますようご確認ください。

(過去の関連記事)
【Q&A】安全衛生管理体制(管理者の選任)について

※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。


2017年

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2017年12月
割増賃金の算定基礎に含む手当

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Q

弊社では現在、賃貸住宅に居住している社員に、居住している賃貸住宅の賃貸料に定率を乗じた金額を住宅手当として支給しています。この度、総務での管理負荷低減や支給有無に関する持家居住者の不公平感解消のため、上記住宅手当の廃止を検討しましたが、手当そのものの廃止には社員からの反対意見が強いこともあり、全社員一律に、「賃貸住宅居住者には2万円、持ち家居住者には1万円」を支給するという内容へ変更することとしました。住宅手当は、労働基準法上の「割増賃金の基礎となる賃金から除外できるもの」に含まれているため時間外手当の算定基礎に含めておりませんでしたが、当該制度変更後の住宅手当についても、このままの対応を継続して良いでしょうか。

A

「割増賃金の基礎となる賃金」から除外できるかどうかは手当の内容により判断されます。制度変更後の住宅手当は除外できる賃金に当てはまらないため、時間外手当の算定基礎に含めなければなりません。

<基本事項>
使用者は、従業員に時間外労働、休日労働、深夜労働を行わせた場合には、割増賃金を支払わなければなりません。割増賃金額は、月の所定賃金額を1ヶ月の平均所定労働時間数で割った「1時間当たりの賃金額」に所定の割増賃金率を乗じて算出された金額に、発生した時間外労働、休日労働、深夜労働の時間数を乗じて計算します。この「月の所定賃金額」には、基本給だけでなく、役職手当やインストラクター手当など、毎月固定的に支払われる各種手当を含む必要があります。そのなかで、以下の手当については、労働と直接的な関係が薄く、個人的な事情に基づいて支給される賃金であること等を理由とし、月の所定賃金額から除外することができます。
① 家族手当
② 通勤手当
③ 別居手当
④ 子女教育手当
⑤ 住宅手当
⑥ 臨時に支払われた賃金
⑦ 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
これらの手当は「除外できる手当の例」ではなく、限定的に列挙され、労働基準法施行規則第21条に規定されているものですので、これらに該当しない賃金は全て算入しなければなりません。
また、①~⑤については、これらの名称であれば全て割増賃金の基礎から除外できるというものではなく、その内容が個人的事情(家族の人数や居住地など)に基づき金額が算定される手当である必要があります。たとえば、通勤手当であれば、居住地から会社までの通勤ルートの定期券金額に応じた費用を支給する場合は算定基礎から除外できますが、実際の通勤距離に係わらず、一律に1日500円を支給する場合などは算定基礎から除外できません。

本件の場合

本件では、制度変更前の住宅手当は、各社員が実際に居住している住宅の賃貸料に一律の定率を乗じて手当の金額を決定しており、社員ごとの事情に応じて金額を設定しているため、割増賃金の基礎から除外できる賃金でした。一方、制度変更後の住宅手当は、社員全員一律に定額で支給されるものであり、割増賃金の基礎となる賃金から除外できる賃金に当てはまりません。算定基礎が正しく設定されておらず割増賃金が不足する場合、割増賃金の請求権が有効な2年間について、再計算のうえ遡及して支払う対応を求められる場合があります。新たに手当を設定したり、既存の手当の内容を見直す際には、割増賃金の算定基礎になるかどうかを精査し、制度移行を進めることが必要です。

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2017年11月
地域限定職の新設

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Q

弊社は全国に事業所を有しており、現行制度の総合職は全員、全国転勤の可能性があります。近年、転勤を望まない若手社員や、親の介護などで転勤を拒む中堅社員が増えており、地域限定職の新設を検討し始めたのですが、弊社の状況として、事業所ごとの業務量が年によって異なり、社員の異動で調整しているという実態があります。その為、勤務場所を完全に限定し、事業所間の異動をまったく認められないとすると、業務上不都合が発生するのではと心配です。どのように制度設計すべきか、アドバイスを頂けますでしょうか。

A

「地域限定職」の制度は、必ずしも事業所限定とするのではなく、事業所間の異動を一定範囲で行う設計も可能です。事業所数や所在地、近隣の事業所間での異動の発生有無など、個社ごとの実情を踏まえ、運用しやすい制度を設計することをおすすめします。

<考えられる定義の例>
「総合職」と区別した「地域限定職」の定義として一般的な例を、以下の通り3種類ご紹介いたします。
1.事業所を限定して勤務する者
「事業所限定採用」と呼ばれることもあり、特定の支店・事業所で雇用され、当該社員のその他の勤務場所への異動は想定されません。近隣の勤務場所含め、全く異動がない前提ですので、社員にとっても分かりやすくシンプルな制度です。勤務場所が限定された雇用契約ということで、事業所の移転や閉鎖などが頻繁に発生する会社では雇用の保障が困難で、運用の難易度が高いといえます。
2.「転居を伴う勤務場所の変更」の対象とならない者
近隣の事業所間の異動対象にはなるものの、転居を要する、自宅からの通勤が不可能な遠隔地への異動は想定されません。比較的近いエリア内に複数の勤務場所を持つ会社では馴染みやすく、転居に抵抗のある社員に受け入れられやすい制度です。但し、社員にとっての利便性を考慮すると、異動先の事業所が当該社員にとって転居を伴わず異動可能な事業所かどうかの判断を行う必要があるため、通勤時間や距離による基準の設定や、当該社員の住んでいる場所等に応じた個別の検討を行う必要があります。
3.異動範囲が会社の定める地域に限定される者
全国転勤は想定されないものの、会社が設定したエリア内(例:関東エリア/関西エリア/…、あるいは「○○支社管轄エリア」等)であれば、転居を伴う異動の可能性が考えられる制度です。エリア設定について会社の自由度が高く、また、地元を遠く離れない転勤であれば許容できる、という社員にも有効な制度です。但し、全国転勤可能な社員についてエリアを超えた異動があまり生じておらず、「総合職」と「地域限定職」の転勤範囲に大きな差がないといった実態がある場合、「地域限定職」を選択する意義を感じにくいということが考えられます。

本件の場合

貴社の場合、事業所間の異動の発生が前提となるため「1.事業所限定採用」は馴染まないと思われます。「2.転居を伴う勤務場所の変更の対象としない者」や「3.異動範囲が会社の定める地域に限定される者」について検討する際には、異動可能な勤務エリアをどう設定するかなど、社員の希望や実情を把握したうえで、なるべく多くの社員が働きやすく勤務が継続しやすい制度をご検討ください。

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2017年10月
従業員の副業・兼業

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Q

弊社で雇用している社員から、定年を前に副業を開始し、セカンドキャリアの形成を始めたいという相談を受けました。副業の内容は、当該社員の長年の趣味を活かしたものであり、また、勤務日も休日をあて、本業には支障のない程度で検討しているとのことです。

弊社では、就業時間外の兼業は事前に申請し、許可を得られれば認められる規程となっておりますが、どのような基準で承認すべきなのでしょうか。

A

現在副業・兼業を禁止する会社が多いのは、過剰労働により本業の業務に支障が出ることや、秘密漏えい、競業による本業への損害を防ぐ目的があるからです。副業を認める場合は、主にその観点で問題がないか、確認すべきと言えます。

<基本事項>
上述の目的で、現在は就業規則等で副業・兼業を原則禁止とする会社が一定数存在しています。貴社のように、副業・兼業を許可制や届出制で認める旨定めている場合は、一般的に、社員が業務内容や勤務日数等を会社に報告し、会社が副業・兼業を認めるかどうか個別に判断する運用としており、判断基準としては主に以下が考えられます。
1.疲労等による本業への影響がないか(長時間・深夜の作業等)
2.本業と競業関係にあたる内容ではないか
3.会社の信用に悪影響を及ぼす内容ではないか
1.は、兼業による過剰労働や屋外作業等で疲労がたまったり、深夜勤務などで翌日の遅刻や欠勤が発生したりと、本業に差支えが出ることを防ぐことを目的としています。
2.は、競合企業において本業で知り得る情報等の不正利用が行われる等、会社が不利益を被る可能性を回避することを目的としています。
3.は、反社会的勢力との係わりや賭博業への従事、マルチ商材の取扱いなど、社員の副業が会社のイメージダウンや信用を落とすことに繋がり、結果として会社に損害が発生するリスクを避けることを目的としています。

ご質問の場合

本件の場合、ご本人が本業に影響がない範囲での勤務形態を想定しており、かつ業務内容も本業とは競業するものではないということですので、概ね問題ないかと見受けられますが、改めて情報確認のうえ、ご判断頂ければ良いかと存じます。

今後、定年を控えた社員に対し、セカンドキャリア開発を会社の再就職準備制度の一環として提供する等、副業・兼業を認める会社が増えることが考えられます。副業・兼業を認める場合は、本業の業務を円滑に遂行してもらうためにも、本業の就業時間内の副業業務を禁止(職務専念義務)することや、副業の業務内容が変更された場合は再度申請を行わせるなど、副業をする社員の労務状況について会社側で継続して管理していくことが必要になります。

本来、就業時間外での個人の活動は自由ですので、会社が理由もなく副業を全面禁止することはできませんが、上述の基準をもとに個別に判断を行うことで、会社の秩序バランスを維持しながら、社員の希望を尊重した対応をすることが可能になります。

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2017年9月
出張時の労働災害認定

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Q

弊社の社員が出張時、宿泊先のホテルの浴室で足を滑らせ転倒し、骨折してしまいました。

業務中の負傷ではないのですが、この場合は労働災害と認定されるのでしょうか。

A

今回のような状況は出張業務に当然付随する行為であり、私的・恣意的行為など特別な事情がない限りは業務上の災害として認定されます。

<基本事項>
業務上の災害とは「労働者の業務上の負傷・疾病・傷害又は死亡」のことであり、業務上と認められるためには、業務と当該傷病とのあいだに「業務起因性」が認められなければなりません。「業務起因性」が認められるためには「業務遂行性」が認めらなければならず、「業務遂行性」とは、具体的には以下が挙げられます。
① 事業主の支配・管理下にあって業務に従事している場合(例:業務行為、生理的必要行為、作業前後の準備行為等)
② 事業主の支配・管理下にあるが業務に従事していない場合(例:休憩時間等)
③ 事業主の支配下にあるが、管理下を離れて業務に従事している場合(例:出張、外出等)
出張は、上記③に当てはまる為、「業務遂行性」が認められます。
業務遂行性が認められたうえで、当該負傷が業務上の傷病であると判断された場合は、「業務起因性」が認められ、労働災害と認定されます。
ただし、出張中に歓楽街に赴くなど通常の経路を逸脱した場合は、私用・私的行為・恣意的行為であるとされ、業務遂行性が認められませんのでご注意ください。また、出張中に実家・親戚宅に訪問する等通常の経路を逸脱した場合も、出張先から実家・親戚宅を訪問している間は労働災害の認定対象外とされますが、ターミナル駅や最寄駅等、自宅に帰る通常の経路に戻った場合は再度認定対象となります。

ご質問の場合

本件の場合、出張先で入浴するために宿泊先のホテルの浴室を利用する行為は出張に当然付随するものであり、業務遂行性が認められます。また、当該入浴中の転倒による負傷であることから業務起因性も認められ、したがって労働災害が認められ、保険給付を受けることができます。ただし、入浴中の転倒が原因であっても、ホテルの浴室を使用せず、近隣の観光地で温泉施設等を利用した結果当該負傷が発生した場合等は、業務遂行性が認められず、労働災害が認定されない可能性があります。そのように通常の経路から逸脱した場合に発生した事故に関しても、社内で判断せず、まず労働基準監督署に申請のうえ、判断を仰ぐこととして下さい。

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2017年8月
改正育児介護休業法への対応について

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Q

2017年10月に改正育児・介護休業法が施行され、2歳まで育児休業の延長が認められるようになると聞きました。わが社の規程もこれに伴い修正する必要がある為、相談させてください。

わが社の現行規程では「1歳に満たない子と同居し、養育する者は、この規則に定めるところにより育児休業を取得することができる。」と定めており、保育所等に入所を希望しているが入所できない等の事情がある場合に、「子が1歳6ヶ月に達するまでの間で必要な日数について育児休業を取得することができる。なお、育児休業の延長を開始しようとする日は、原則として子の1歳の誕生日に限るものとする。」として延長することを認めています。この「1歳6ヶ月」の部分を「2歳」に変更するだけで法改正への対応は問題ないでしょうか。

また、育児休業の延長を行うタイミングは「1歳の誕生日」のみとして良いでしょうか。厚生労働省の「育児・介護休業等に関する規則の規定例[簡易版]」では、2歳まで育児休業を延長する場合は1歳6ヶ月に達したときに申請を行うことになっていますが、これを省略し、1歳に達したときの1回の申請で2歳まで育児休業を与えられるよう規定しても良いのでしょうか。

A

今回の改正に対し、貴社で想定されている規程の文言の「1歳6ヶ月」を「2歳」とする変更で法改正への対応は問題ございません。申し出のタイミングについては、子が1歳6ヶ月に達した時点での2歳までの再度の育児休業延長申請手続きを省略し、1歳の誕生日から2歳までの育児休業を1回の申請で与えるよう規定することは法令違反とはなりません。

<基本事項>
育児・介護休業法では、子が1歳に達するまでの間、育児休業をすることができるとされ、保育園に入れない等特別な事情がある場合は、現行法では子が1歳に達したときに1歳6ヶ月まで延長の申請をすることが可能とされていました。
改正法では、1歳6ヶ月以後も特別な事情が継続する場合、育児休業から復帰し働く意思のある労働者がそれにより退職を余儀なくされる事態を防ぐことを目的とし、子が2歳に達するまでの再度の延長が可能とされ、個別の事情に合わせた期間の選択が出来るようになりました。

ご質問の場合

本件について、貴社現行規程では育児休業の延長を1歳6ヶ月まで認める内容となっておりますので、改正法に合わせ2歳までの育児休業を可能とする内容に変更する必要がございます。(もちろん、3歳までの育児休業を認める等、法律を上回る対応をすることも問題ありません。)
また、申請のタイミングは必ずしも数回に分けた規定とする必要はなく、頂いた変更内容で法改正への対応として問題ございませんので、改正育児介護休業法の施行までに規程を改定してください。

一方で、子が1歳に達したとき、1歳6ヶ月に達したとき、それぞれのタイミングで労働者から会社へ育児休業の申し出をすることが、本人の職場復帰の意思を相互に確認することができる機会になるとして、厚生労働省のモデル規程で推奨されています。また、本改正にあわせ、休職する労働者の事情やキャリアを考慮し早期の職場復帰を促すことは「育児休業等に関するハラスメントに該当しない」との内容で厚生労働省の「育介指針」も改正されました。休業を可能とする一方で、会社が労働者のキャリア形成についてサポートすることの必要性にも着目されています。職場復帰を希望する労働者が、できる限りキャリアに関する不安を軽減し、気持ちよく職場復帰できるような会社としての仕組みの構築についても、宜しければご検討ください。

※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。

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