Question
社員より、事実婚の妻の親の介護を目的とした介護休業を取得したいと申し出がありました。 会社の規程には、介護休業の対象家族の定義に事実婚について明記していないのですが、取得を認めてよいでしょうか。
Answer
育児・介護休業法に基づき、事実婚の夫や妻、その両親は介護休業の対象家族に含まれるため、会社の規程の有無にかかわらず要件を満たす社員の申し出を会社が拒むことはできません。また、介護休業給付金をはじめ多くの社会保障制度の手続きにおいて、事実婚の関係を証明する書類を提出することで、事実婚はいわゆる法律婚と同等に取り扱われます。
<基本事項>
事実婚には明確な定義や基準が存在しませんが、内閣府資料では事実婚は「法律上の要件(届出)を欠くが、事実上夫婦としての実態を有する関係」を指すとしており、社会通念上もそのように理解されています。
育児・介護休業法第2条第4項では、同法における配偶者について「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む」と明記されており、事実婚の夫婦とその両親も介護休業の対象家族とみなされます。これにより、会社の規程で事実婚の夫婦を含むと明記していない場合でも、社員から介護休業の申し出があったとき会社は取得を拒むことができません。
多くの社会保障制度において、事実婚と婚姻の届出をしているいわゆる法律婚は同等に取り扱われており、育児・介護休業法に基づく各種制度も例外ではありません。これらの申請手続きにおいては、事実婚の関係を証明するために住民票や同一世帯証明書類の提出が求められ、会社が資料を取りまとめて申請することがあります。
<近年のトレンド>
また、近年では社宅や慶弔金等、福利厚生制度の対象家族の定義に、事実婚の相手や同性パートナーを含める企業が増えています。対象家族の定義を拡大する際には、例えば会社の規程で対象家族を「配偶者(異性か同性かにかかわらずそれに準ずると会社が認めるもの)」等と定義し、対象者は個別の実態を確認したうえで各種制度を適用する運用が考えられます。住民票等、社会保障制度の申請手続きで証明書類として扱われる資料や、自治体が発行するパートナーシップ証明書の提出を求めることが考えられますが、後者はすべての自治体で取得できるわけではないことにも留意しましょう。
なお、社内独自の制度は会社の判断で適用対象を定められますが、合理的な理由なく一部の制度のみ適用対象を拡大してしまうと、社員にとって分かりづらく納得感が得られないおそれがあります。対象家族を拡大する際には、矛盾のない制度となるよう丁寧な検証が必要です。
<今回のケース>
今回のケースでは、会社の規程の有無にかかわらず、法定どおり介護休業の取得を認めるべきであると回答しました。そのうえで、事実婚の関係を判断するために、住民票等の提出を求めることを推奨しました。
<参考>(2024.4.25閲覧)
「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成三年法律第七十六号)」
e-GOV法令検索 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=403AC0000000076
「いわゆる事実婚に関する制度や運用等における取扱い」
(内閣府男女共同参画局総務課調査室) https://www.gender.go.jp/kaigi/kento/Marriage-Family/7th/pdf/6.pdfPDF
「介護休業給付について(ハローワークインターネットサービス)」
(厚生労働省) https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_continue.html
※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。