Question
当社の賞与制度はポイント制を採用しており、絶対評価を実施し、その結果に応じて原資配分することで支給額を決定しています。
今年度は全体的に高評価の社員が多かったため、ポイント単価が下がり、努力して高評価を得たにもかかわらず、昨年度と比較して賞与額が大きく減少した社員から不満が寄せられました。どのように対応すればよいでしょうか。
Answer
どのような賞与制度にもメリットとデメリットがあります。会社としてどのようなポリシーをもって制度を定めて運用したいのかを再確認し、その上で対応方針を決定することが重要です。決定した方針については社員に適切に説明し、理解を得られるようにするのが良いでしょう。
基本事項
絶対評価・原資配分型の賞与(ポイント制)とは、賞与原資の総額を社員全員分の評価別の支給ポイントで割ってポイント単価を算出し、各社員の支給ポイントとポイント単価を掛け合わせて各社員の賞与支給額を決定する仕組みです。
メリットとしては、個人の成果に基づいた評価が可能で社員からの納得感を得ることができ、且つ賞与原資のコントロールがしやすい点です。一方、デメリットとしては高評価社員が多くなった場合に一人当たりの賞与支給額が減少し、社員の期待していた賞与額に達さずモチベーション低下につながるリスクがあります。
対応策
今回のご相談は、絶対評価・原資配分型の賞与を導入している場合のデメリットに該当し、実際に社員から不満が生じているケースになります。主な対応策としては以下の4つの案が挙げられます。
① 現行制度を維持しつつ、 緩やかな評価分布率を設定する
絶対評価を維持しながら、緩やかな評価分布率を設定することで、評価の偏りを抑え、ポイント単価が年ごとに大きく変動することを防ぐ方法です。
② 現行制度を維持し、 高評価者が多い場合は賞与原資を増やす
高評価者が多い場合は基本的に会社業績も向上していると考えられるため、その分賞与原資を増やし、ポイント単価の低下を防ぐ方法です。ただし、会社業績が向上していないにもかかわらず高評価者が多い場合は、目標設定が適切でない、または評価が甘い可能性があるため、評価委員会の設置や評価者研修等、運用の是正が必要です。
③ 相対評価に変更し、賞与も絶対額支給型に変更する
評価を相対評価に変更し、評価に応じて定められた賞与額を支給する方法への変更になります。賞与原資をコントロールすることができ、年ごとに賞与支給額が変動することを防ぐことが可能です。しかし、評価分布を守るためどのようなパフォーマンスであっても、一定の評語を発生させるよう評価調整が必要となり、社員の評価に対する納得感が低下し、デモチベーションを招くリスクがあります。
④ 絶対評価は維持し、賞与を絶対額支給型に変更する
絶対評価は維持しつつも、評価に応じて定められた賞与額を支給する方法への変更です。個人の成果に基づいた納得感のある評価が可能となり、高評価者が増えても個人の賞与額には影響しません。しかし、高評価者が増えるほど会社全体の賞与支給額が増加するため、会社の財務負担が大きくなる可能性があります。
<まとめ>
現行の絶対評価・原資配分型賞与を継続する方が会社のポリシーに合致する場合は、運用でデメリットを補填する方法を検討するのがよいでしょう。一方、会社のポリシーにそぐわない場合は、相対評価や絶対額支給型への制度変更を検討することをお勧めします。
いずれの場合も、会社としての方針や制度の意図を社員に丁寧に説明し、納得感を得られるよう努めることが重要です。
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