Question
当社では法令上求められる労使協定の締結を進めています。時間外労働及び休日労働に関 する労使協定(36 協定)は締結は完了したものの、労働基準監督署への届出は来週になる 予定です。従業員の時間外労働はいつから認められますか。
Answer
36 協定は他の労使協定と異なり、労働基準監督署への届出をもって効力が発生するため、 届出が完了してからでないと従業員に時間外労働をさせることは認められません。
<基本事項>
時間外労働など労働基準法の範囲を超える規定を就業規則に設ける場合、労使協定の締結 が求められます。そして、労使協定には
① 労使協定締結時点で効力が発生し、届出の必要がないもの
② 労使協定締結時点で効力が発生するが、届出が義務付けられているもの
③ 労使協定締結時点では効力は発生せず、届出が完了したら効力が発生するもの
の3 種類があります。
①には
- フレックスタイム制の労使協定(清算期間が1か月を超えない場合)
- 休憩の一斉付与の例外に関する労使協定
- 月の時間外労働が60時間を超えた際の代替休暇に関する労使協定
- 年次有給休暇の計画的付与に関する労使協定
- 年次有給休暇の賃金を標準報酬日額相当額で支払う場合の労使協定
- 育児休業及び介護休業が出来ない者の範囲に関する労使協定
- 継続雇用制度に関する労使協定
- 賃金控除に関する労使協定
- 時間単位の年次有給休暇に関する労使協定
などが該当し、⓶には
- フレックスタイム制の労使協定(清算期間が1か月超~3か月の場合)
- 事業場外みなし労働に関する労使協定(みなし労働時間が法定労働時間を超える場合)
- 専門業務型裁量労働制に関する労使協定
- 労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合の労使協定
- 変形労働時間制に関する労使協定
36 協定のみ⓷に該当するため、労働基準監督署への届出までは効力は発生せず、したがって届出までに従業員に時間外労働をさせることは法令違反となります。
労働基準監督署への締結や届出が義務づけられているにもかかわらず、適切に対応しない まま従業員に例外規定を適用しようとした場合、労働基準法違反として罰則の対象になり ます。例えば、36 協定を締結せずに時間外業務や休日労働をさせた場合は、労働基準法 32 条の違反として、6 か月以下の懲役又は 30 万円以下の罰金が科せられます。事業者だけで なく、現場の労務管理を担当する責任者も罰則の対象となります。さらに、厚生労働省およ び労働局により企業名公表という社会的制裁を受ける可能性もあるため、ご注意ください。
なお、36 協定をはじめとした労使協定届や就業規則届は電子申請も可能です。電子申請で あれば即日届出が可能であるため、36 協定の効力発生のタイムラグを心配する必要はあり ません。電子申請について、詳しくは厚生労働省のパンフレットをご確認ください。
参考
「主要様式ダウンロードコーナー」厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/ (2022年6月13日閲覧)
「労働基準法等の規定に基づく届出等の電子申請についてパンフレット」厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000919894.pdfPDF (2022年6月13日閲覧)
<今回のケースについて>
36 協定の届出前に従業員に時間外労働を命じた場合、罰則を受ける可能性があるため、社 内周知を行い法令違反とならないよう運用を徹底しましょう。なお、今後は届出手続きを迅 速かつ簡単に完了できるよう、電子申請をご検討ください。
※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。