Question
私傷病により休職中の社員が、まもなく休職期間を満了する予定です。 社内規程に則り、期間満了をもって退職となる予定ですが、注意点はありますか。
Answer
私傷病での休職期間満了による退職は社員本人の意思によって退職する自己都合退職とは区別され、 就業規則など会社の規程に基づいて自動的に労働契約が終了します。 休職事由や休職中の会社の対応によっては不当解雇とみなされる可能性があるため退職の手続きにあたっては注意が必要です。
<基本事項>
就業規則など会社の規程に「休職期間が満了し、なお休職事由が消滅しないときは退職する」旨が 明記されている場合、休職期間の満了までに復帰ができなければ自動的に労働契約が終了します。
これは私傷病の場合に限り、業務上の疾病の場合には休業中や直後の解雇が制限されているので注意が必要です。 また、医師が復職可能と判断しており、本人も復職を希望している場合に会社が正当な理由なく復職を認めずに退職扱いとしてしまうと不当解雇とみなされるリスクがあります。 こうしたトラブルを防ぐためには、休職期間中も対象者と丁寧にコミュニケーションを取り、 状態の把握に努めることが大切です(復職支援については2022年12月記事をご参照ください)。
休職の開始時点で、期間満了の時期や満了時の取り扱いについて書面等を通じて社員に通知し、 会社と社員間での認識を揃えておくこともトラブル防止に効果的です。
<退職手続きにおけるポイント>
期間満了に伴い退職となる場合の退職手続きには自己都合退職とは異なる点があるため、 あらかじめ取り扱いを明確にしておく必要があります。
・退職届
本人の退職意思の申出に会社が合意することで退職が成立する自己都合退職とは異なり、 期間満了による退職の場合は、労働者と会社いずれの意思も介在せず自動的に労働契約が終了します。 退職届は受理せず、事実関係が明確になるよう期間満了の時点で、 会社から休職期間満了と退職の旨を以下のように明記した通知書を発行することが一般的です。
(休職満了通知書 文言例)
XX年XX月XX日より開始した貴殿の私傷病休職について、就業規則第X条X項にもとづき、 XX年XX月XX日をもって休職期間が満了に至り、同日付で退職となることをここに通知する
・退職金
会社に退職金制度がある場合は、私傷病による休職期間の取り扱いや適用する算定式もあらかじめ規程上で定めておくことを推奨します。休職期間は勤続年数に通算しないことが一般的で、退職事由によって適用する退職金の算定式を変える制度の場合、定年退職等に適用する算定式ではなく自己都合退職と同じ算定式を適用する企業が多い傾向があります。社内の規程にこうした定めがない場合はトラブル防止のため、労働者にとって有利となる対応をすることも考えられます。
また、私傷病に伴う休職期間が満了して退職した後は、雇用保険等の公的給付が受けられる場合があります。退職事由や求職活動の有無により受給できる給付金やその条件が異なるため、人事担当者は、手続きをあらかじめ確認した上で、必要な対応を遅滞なく行うことでトラブルを防ぐことができます。
<参考>(2024.6.4閲覧)
「第10回メンタルヘルス不調で休職中の社員が退職する場合雇用保険はもらえるの?」
(こころの耳・厚生労働省) https://kokoro.mhlw.go.jp/mental-health-qa/mh-qa010/
※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。