Question
当社では出勤とテレワークを組み合わせたハイブリッド勤務を実施しており、業務の都合上出勤や顧客訪問等が求められる場合を除き、 働き方は従業員が任意で決定できることにしています。1日の中でオフィス勤務、顧客訪問、在宅勤務と転々と移動しながら勤務をする場合もありますが、 それぞれの移動時間は労働時間として扱うべきですか。それとも通勤時間や休憩時間とみなされますか。
Answer
顧客訪問は業務の都合上必要な移動であるため、労働時間と扱うことが一般的です。 一方で、会社の指示ではなく、あくまで任意でオフィスへの出勤や在宅勤務のために帰宅をする場合の移動時間は、 業務に従事せず自由に過ごすことができるのであれば、労働時間に含めなくても問題ありません。
<基本事項>
厚生労働省のガイドラインでは「使用者が労働者に対し業務に従事するために必要な就業場所間の移動を命じ、 その間の自由利用が保障されていない場合の移動時間は、労働時間に該当する」とされています。会社の指示でオフィスへの出勤を求めたり、 業務上の都合で顧客を訪問したりする場合に、移動時間の自由利用が保障されていなければ、労働時間に該当するでしょう。 一方で、任意で出勤や在宅勤務のため帰宅をする際の移動時間は、例えば本を読んだり、途中で子どもの送り迎えやカフェに立ち寄ったりといった 自由利用が可能なケースが殆どと考えられるため、その場合は労働時間に含めなくても問題ありません。 ただし、会社に移動をすること自体は命じられていなくても、移動中にモバイル勤務等への従事を命じられた場合には労働時間に該当します。
従業員に周知をする際に、次のようなハイブリッド勤務のいくつかのパターンを例示して、それぞれの移動時間の取り扱い方を解説している事例 がよく見られます。厚生労働省のガイドブックを参考に、各社におけるハイブリッド勤務のガイドブックを整備されることをおすすめします。
<ハイブリッド勤務の移動時間の取り扱いルール(例)>
- 従業員は自宅での在宅勤務・オフィス勤務どちらも業務上の必要が無ければ任意で選択できることとする
- 自宅-オフィス間の移動は通勤とみなし、労働時間外とする
- オフィス-顧客訪問先間の移動は労働時間とする
- 自宅-顧客訪問先間の移動は通勤とみなし、労働時間外とする
【ハイブリッド勤務の事例1 オフィス勤務×顧客訪問×在宅勤務の組み合わせ】

上の取り扱いルールに従うと、④移動は労働時間ですが、⑥通勤は労働時間に含みません。よって当日の労働時間は10:00~16:00(昼食休憩 1時間を除く)および17:00~18:00となります。
【ハイブリッド勤務の事例2 時間単位休暇×オフィス勤務の組み合わせ】

休暇を組み合わせる場合、①時間単位休暇が終了しても、③通勤もまた自宅-オフィス間の移動として労働時間に含めないため、 当日の労働時間は16:00~18:00となります。
<今回のケースについて>
ハイブリッド勤務では様々なパターンが想定されますので、事前にどのような場合に労働時間として扱うのかの基準を従業員に周知しておくことが重要です。
なお、今回のケースで挙がった顧客訪問については、業務上の都合で発生した移動であるため、自宅からの移動時間であっても労働時間に含めるといった労働者有利の取り扱いをすることも考えられます。
厚生労働省のガイドラインだけでなく、自社の従業員の業務実態を考慮した上で、適切な就業管理のルールを設定しましょう。
<参考>
「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/000828987.pdf PDF(2023.11.14閲覧)
※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。