Question
リファラル採用制度を導入し、紹介してくれた社員に対して報奨金を支給したいと考えて います。支給にあたって必要な手続きや、留意事項について教えてください。
Answer
リファラル採用の報奨金は、職業安定法に抵触しない範囲内で給与や賞与の形で支給しま す。よって、通常の給与・賞与を支給する際に必要となる就業規則への記載や社会保険の手 続き等が発生します。
<基本事項>
法令上、有料の職業紹介事業を行おうとする者は厚生労働大臣の許可を受けなければなら ないとされており、認可を受けていない者に対して労働者紹介の報奨金を支払うことは「賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合」を除いて違法となります。リファラル採用制度で想定される自社の社員は紹介業の許可を得ていない場合が殆どだと考えられるた め、報奨金は適正な賃金、給料という形で支払うことになります。一般的にリファラル採用 の報奨金は高額すぎてはならないと言われているのは、高額な報奨金は「労働の対償としての賃金、給料」と見做されにくいためです。
労働の対償という形であれば、給与、あるいは賞与、どちらに含めて支給をしても問題ありません。労働基準法では賃金に関する事項を必ず明示するよう定めているため、リファ ラル採用の報奨金を賃金に準じる形で支払うには、あらかじめ支給日や支給額などの条件 を就業規則に記載が必要です。報奨金のほかに、リファラル採用の活動のためにかかった 交通費や飲食費などの実費を支給することも可能です。
また、給与あるいは賞与のどちらで支払うかによって社会保険の手続きが異なることにも注意が必要です。
【給与として支給する場合】
特に手続きは不要ですが、固定給として毎月支給する場合には、変動月から 3 ヶ月の実績で標準報酬月額に 2 等級以上の差が生じたときには随時改定のため月額変更届を提出しま す。
【賞与として支給する場合】
報奨金以外の賞与と併せて年 3 回までの支給であれば、社会保険の賞与支払い届を提出します。年 4 回以上支給する場合には「報酬」扱いとなり標準報酬月額に含める必要がある ため、計算が煩雑になります。
他に報奨金支給の留意事項としては、支給日を「紹介した社員の入社○ヶ月後」といった設定にしている場合、入社直後に支給する場合と比較してインセンティブ効果が薄まることです。インセンティブ効果を高める狙いで、支給日を入社半年後から入社翌月へと早め た企業の事例もございます。
ある企業では「従業員紹介手当」の名目で、社員が採用候補者を紹介して採用に至り、入 社後 3 ヶ月間勤務継続した場合、直近の給与支給日のタイミングで紹介した従業員に定額 を支給する制度を導入しました。給与実務の観点で「割増賃金の算定基礎の含めるべき か」と疑問が上がりましたが、厚生労働省の示す割増賃金の計算の基礎となる賃金
( https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyunhou_24.html )の
(6) 臨時に支払われた賃金
に該当するため算定基礎から除くと整理しました。
なお、賞与に上乗せして支給する場合にも
(7) 1 ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(※賞与など毎月発生しない賃金が該当)
に該当するため、やはり算定基礎から除いて問題ないと考えられます。
<参考>
「割増賃金を計算する際の基礎となる賃金は何か。」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyunhou_24.html (2023 年 1 月 12 日 閲覧)
<今回のケースについて>
報奨金の支給を制度化するためには、就業規則への記載および社会保険手続きを忘れずに 行いましょう。
<過去の関連記事>
リファラル採用におけるインセンティブの支給について 人事労務 Q&A | ヒューマンリン ク株式会社 (humanlink.co.jp) (2021 年 3 月掲載)
※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。