Question
大雪により交通機関の乱れが発生した日に、社員が自己判断で出勤を見送りました。会社として出勤停止や休業の命令は出していませんでしたが、 この場合、賃金や休業手当を支払う必要はあるのでしょうか。
Answer
社員本人に労働する意思・能力があるにもかかわらず会社都合により休業する場合には、休業手当を支払わなくてはなりません。 一方、不可抗力による休業の場合や社員本人に労働の意思がない場合には、賃金や休業手当の支払いは不要とされています
<基本事項>
労働基準法第26条の定めにより、社員本人に労働する意思・能力があるにもかかわらず、 「使用者の責に帰すべき事由」により休業する場合には、平均賃金の6割以上の休業手当を支払わなくてはなりません。 さらに民事訴訟となった場合には、民法第536条第2項の適用により、10割の賃金を支払うことが求められることもあります。
一方、不可抗力による休業の場合や、社員本人に労働の意思がない場合には、休業手当や賃金の支払いは不要とされています。 休業時の取り扱いについては、あらかじめ労使間で合意し、給与規程等に定めておくこともできるため、必要に応じて整備しておくことをおすすめします。
ここでは3つの場合を取り上げ、休業手当や賃金の支給要否の判断基準を説明します。
① 大雪や台風等の災害により社員の出勤や工場の稼働が不可能である場合
この場合は、原因が外部により発生したもので、会社が努力しても避けられない事態に該当し、 不可抗力による休業であると考えられるため、賃金や休業手当の支給は不要です。
② 社員の出勤や工場の稼働は可能だが、大雪等の影響を鑑み安全配慮の観点から会社判断で出勤停止を命じた場合
この場合は、本来稼働ができる状況の中で会社が休業の判断をしているため、 「使用者の責に帰すべき事由」に該当し、労働基準法第26条に基づき手当の支給が必要です。
災害などの不可抗力による場合を除き、資材の不足や機械の故障等、 会社側に起因する経営・管理上の障害がある場合も使用者の責に帰すべき事由に該当すると考えられています。
③ 大雪等の影響による会社の休業命令はないが、社員の判断で出勤を見送った場合
個人の判断で出勤を見送った場合、ノーワークノーペイの原則に基づき欠勤分の賃金や休業手当の支払いは不要です。 会社として出勤停止の命令を出すほどではないものの、社員に休みやすい環境を提供したい場合には、有給休暇の取得を推奨することも一案です。
<今回のケース>
今回のケースでは、大雪による交通機関への影響に伴い、社員の自己判断で出勤を見送ったため、休業手当及び賃金は支給する必要はないと回答しました。 ただし、会社から大雪の状況での出勤取り扱い等に関して事前にアナウンスができていなかったため、社員が希望した場合には、事後承認で有給として取り扱うことをお勧めしました。
<参考>(2024.3.6閲覧)
「労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)」
e-GOV法令検索 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049「民法(明治二十九年法律第八十九号)」
e-GOV法令検索 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089「労働者を休業させるときは休業手当の支払いが必要です」
(厚生労働省・岩手労働局・労働基準監督署)https://jsite.mhlw.go.jp/iwate-roudoukyoku/content/contents/020727kyugyo.pdfPDF
※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。