人事・労務Q&A

育児関連休業中の就労について

Question

育児休業中の従業員がいますが、新型コロナの影響で人手が足りないため、会社としては就 業できる日は協力してほしいと思います。育児休業中は原則就労不可と理解していますが、 会社の緊急時であっても認められないのですか。また、就労できる場合に育児休業給付金はどうなりますか。

Answer

育児休業中の就労は原則不可です。ただし、労使の話し合いにより、子の養育をする必要が ない期間に限り就労することが認められる場合があります。育児休業給付金は休業中に発生した賃金に応じて減額されます。

<基本事項>

育児休業は、子の養育を行うために休業期間中の労務提供義務を消滅させる制度であり、休 業期間中の就労は想定されていません。一方で、2022 年 10 月に施行された出生時育児休業 (産後パパ育休)は、一定の範囲で休業中に就業することが認められます。
育児休業では、労使の話し合いにより、子の養育をする必要がない期間に限り、一時的・臨時的にその事業主の下で就労することができます。厚生労働省は一時的・臨時的就労の例として

  • ある労働者は育児休業の開始当初は全日を休業していたが、一定期間の療養が必要な感染症がまん延したことにより生じた従業員の大幅な欠員状態が短期的に発生し、一時的 に当該労働者が得意とする業務を遂行できる者がいなくなったため、テレワークによる 一時的な就労を事業主が依頼し、当該労働者が合意した場合

などを挙げています。詳しくは<参考>の「事業主・労働者の皆さまへ育児休業中の就労 について」をご覧ください。
ただし、恒常的・定期的な就労は認められないため、休業開始時点であらかじめ就業日を決 めたり、定期的に特定の曜日や時間に就業したりすることはできません。
育児休業給付金は、育児休業中に就業している日が 10 日以内かつ就業している時間が 80 時 間以内の場合が支給対象です。原則、休業開始 6 か月までは休業開始時賃金日額の 67%、6 か月経過後は 50%が支給されます。しかし、休業期間中に就業をして各支給単位期間(育 児休業を開始した日から起算した1か月ごとの期間)に賃金が支払われると

  • 賃金が賃金月額の13%(6か月経過後は30%)を超えて80%未満の場合

支給額は(賃金月額×80%)と賃金の差額となり、

  • 賃金が賃金月額の80%以上の場合

給付金は支給されません。
出生時育児休業は、労使協定を締結している場合に限り、以下の要件を満たしかつ労働者が 合意した範囲で休業中に就業することが認められます。

  • 休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分
  • 休業開始・終了予定日を就業日とする場合は当該日の所定労働時間数未満

手続きの流れとしては①~④のとおりです。
① 労働者が就業してもよい場合は、事業主にその条件を申し出る
② 事業主は、労働者が申し出た条件の範囲内で候補日・時間を提示する
③ 労働者が同意する
④ 事業主が書面等で通知する
なお、あらかじめ就業日と決まっていた場合でも急遽休暇を取得しなければならなくなったときには、通常の就業日と同様に有給休暇の取得や欠勤として取り扱うことが可能です。
出生時育児休業においても育児休業と同様に給付金を受けることができます。
企業によっては育児休業および出生時育児休業の「○日までは有給」と規定している企業もあります。これにより育児休業給付金の支給対象とならない短期の育児休業を取得しやすくなるため、長期の育児休業を取得しないことの多い男性の育児休業取得を促進する意図 で導入している企業が多いようです。
最後に、産前産後休業中の就業についてです。産前産後休業は産前 6 週間に女性が請求した 場合および産後 8 週間に休業する制度ですが、産前については女性本人が希望すれば休業せずに就業を続けることができます。産後は原測、8 週間を経過しない女性の就業は禁止さ れているものの、産後 6 週間を経過した女性本人が請求した場合で医師が支障がないと認めた業務に限り就業が可能となります。
産前産後休業により賃金の支払いがない日は、健康保険の被保険者が申請すれば出産手当金が支給されます。金額は休業した日 1 日につき、標準報酬日額の 67%です。産前産後休業 期間中に就業した場合は、当該就業日のみ支給対象になりませんが、就業すること自体は問 題なく、休業した日の手当金支給額にも影響はありません。ただし、短時間でも就業した日 に出産手当金は全く支給されないため、例えば軽勤務などで賃金が出産手当金の支給額を 下回っても、その差額は支給されないことになります。
出産・育児関連でも休業の種類によって就業の要件が異なり、また就業によって給付金等の金額が変わる可能性がありますのでご注意ください。

<参考>

「事業主・労働者の皆さまへ 育児休業中の就労について」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000706037.pdfPDF (2022 年 11 月 11 日閲覧)

「育児休業期間中に就業した場合の育児休業給付金の支給について」厚生労働省・都道府 県労働局・ハローワーク https://jsite.mhlw.go.jp/okinawa-roudoukyoku/library/okinawa- (2022 年 11 月 11 日閲覧)

「育児休業給付」ハローワーク https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_childcareleave.html (2022 年 11月11日閲覧)

今回のケースについて

想定される就業が厚生労働省の示す一時的・臨時的就労に該当すれば認められる場合がありますが、原則、育児休業中は労働者が子の養育に専念できるよう体制を整えることが事業主には求められます。
あるいは、休業前にあらかじめ休業開始直後の就業が見込まれる場合は、育児休業取得時期をずらすことや、特に男性は出生時育児休業を取得することができないかご検討ください。

過去の関連記事

【Q&A】育児休業取得時期変更・就労について 人事労務 Q&A | ヒューマンリンク株式会 社 (humanlink.co.jp)  (2021 年 4 月掲載)

※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等 によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。