Question
当社では、一定期間仕事から離れて就学やスキルアップを希望する社員が増えており、サバティカル休暇制度の導入を検討しています。 制度の設計時に検討するべきポイントを教えてください。
Answer
個人のリスキリングへの支援拡充等を背景に、近年サバティカル休暇制度を導入する企業が増えています。 制度の趣旨を明確にした上で、制度利用の目的や期間、対象者等の要件や給与の取り扱い等を検討しましょう。
<基本事項>
サバティカル休暇制度とは、勤続者が様々な目的で一定期間の休暇を取得できる制度を指します。 充電休暇やディスカバリー休暇等、企業によって別の呼称を用いる場合もあります。 大学教員等の研究のための休暇が起源とされ、欧州を中心に民間企業にも広まりました。 昨今、日本でも個人の学び直しやワークライフバランスを後押しする制度として注目を集めるようになっています。 企業にとっても、優秀人材のリテンションや社員のエンゲージメント向上など様々なメリットが期待できる制度ですが、 制度趣旨や取得のルールが明確であることが肝要です。設計にあたっては、以下のようなポイントを検討しましょう。
<制度設計にあたっての検討ポイント>
・取得目的の制限の有無
サバティカル休暇制度は、取得の目的に制限が設けられていないことが一般的です。 実際の取得目的は、リフレッシュや就学、資格取得、育児・介護等、多岐にわたります。 制度趣旨に応じて取得目的の制限の有無を検討するとよいでしょう。
・取得期間の上限の設定
長期休暇の取得者がいる場合は欠員補充も必要となるため、人員体制やビジネスの特性等も加味して上限を定めましょう。 1か月~1年程度で設計している企業が多くみられますが、大学院進学や海外留学のために休暇を取得する場合を想定して、1、 2年程度を上限とする企業もあります。
・取得対象者の要件
対象者を明確にするため、勤続年数や出勤率等、要件を具体的に定めましょう (例:勤続5年以上かつ出勤率が8割以上の社員)。長期の休暇取得を認める場合には長期勤続社員を対象にする等、 取得期間とのバランスを考慮して決めるとよいでしょう。
・休暇中の給与や社会保険料等の取り扱い
サバティカル休暇制度は法律で定められた制度ではないため、会社の裁量で給与や賞与の取り扱いを決めることができます。 無給とする例が多く見受けられますが、生活の保障として一定の給与を支給する企業や、リスキリングに対する補助を行う企業もあります。 こうした場合には支給期間を限定したり、休暇の取得目的に一定の制限を設けたりすることが考えられます。
また、休暇取得中も社会保険料が発生するため、社員の自己負担とするか会社負担とするか、あらかじめ取り扱いを定めておく必要があります。
・離職の予防策
休暇取得中に得た経験がきっかけで離職する例もあります。 復帰後にギャップが生まれないよう社内での活用イメージをあらかじめ伝達するなど、スムーズな復帰に向けた支援ができるとよいでしょう。 また、休暇の取得目的に制限がない場合でも、取得目的の報告を義務付け、休暇中の過ごし方を踏まえて社員のキャリア志向を確認する場を 設けることも一案です。
<まとめ>
自律的なキャリアを形成するためにスキルアップを考える人材が増える中、会社としての支援の在り方が問われつつあります。 支援策の一つとてサバティカル休暇制度を導入する際には、自社にあった制度を設計し、丁寧に社内周知をして取得しやすい ような環境整備をしていけるとよいでしょう。
※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。