人事・労務Q&A

フレックスタイム制におけるコアタイムの廃止

Question

現在コアタイム有りのフレックスタイム制を導入しています。より柔軟な働き方を叶えるためにコアタイムの廃止を検討していますが、設計するにあたって注意点はありますか。

Answer

コロナ禍以降に従業員の働き方が見直される中で、フレックスタイム制のコアタイムを廃止してフルフレックスタイム制とする企業が見受けられました。フルフレックスタイム制とすることで従業員のワークスタイル、ライフスタイルやその日の体調に合わせた働き方が可能となりますが、勤怠管理や健康管理、コミュニケーションの減少には注意が必要です。

<基本事項>

フレックスタイム制は始業・終業時刻を労働者が自由に決定できる制度であり、必ずしも所定労働日や休日を自由に決定することを認める制度ではありませんが、設計次第では清算期間内で勤務時間を調整することで勤務時間を割り振らない日を作ることも可能です。また、フレキシブルタイムや休憩時間についても様々な設計が考えられます。よって、フルフレックスタイム制を導入する際には、主に次の3点を検討します。
(1)所定労働日に勤務しないことを認めるか
人事院は2025年4月から、フレックスタイム制の活用によって勤務時間の総量を維持した上で週1日を限度に勤務時間を割り振らない日を設定可能とするよう各省庁へ勧告しており、国家公務員の選択的週休3日制が開始されると話題になりました。
ただしその場合、勤怠管理が複雑化することや、1日の労働時間が大きく偏り長時間労働が続くことが懸念されるため、1日の労働時間を適正な範囲でコントロールするために所定労働日・休日の規定は設けたままとするのが良いでしょう。制度の自由度は下がりますが、最短勤務時間の規定を設けて1日の勤務時間が日によって偏りすぎないようにする設計も可能です。

(2)フレキシブルタイムに制限を設けるか
コアタイムもフレキシブルタイムも設定されていない場合、従業員は1日のどんな時間にも働くことが可能となるため、長時間の深夜労働も発生しえます。従業員の健康面や、他の従業員・顧客とのコミュニケーション面で懸念がある場合は、フレキシブルタイムを5:00~22:00などで設定して深夜勤務を認めない設計も可能です。

(3)一斉休憩時間を設けるか
コアタイムや最短勤務時間を設けない場合は1日の勤務時間の長さが人によって異なるため、従業員に対しては法令に則って勤務時間に応じて取得すべき休憩時間を周知し徹底することが重要となります。コアタイムを設定しなくとも、勤務管理のしやすさや休憩取得を促す観点から、多くの企業で見られるお昼の一斉休憩の適用を維持することも考えられます。その場合も、一斉休憩の時間にかからない時間帯に6時間以上勤務をするときには休憩の取得が必要です。

フルフレックスタイム制の導入に際しては、以上3点についてよく検討するほか、労使協定の締結も忘れずに行いましょう。また、制度設計次第では割増賃金の支給方法や休暇・代休の付与の方法が変わる可能性もあります。制度の自由度が上がることで従業員が裁量労働制と混同して割増賃金が支払われないのではないかと不安を持つことや、所定労働日・休日の設定を勘違いすること、業務遂行に必要なコミュニケーションがとりづらくなることも想定されます。従業員に対しては制度の趣旨を説明して理解を促すとともに、コミュニケーションの円滑化を促す工夫が求められます。

<今回のケース>

一口にフルフレックスタイム制といっても、様々な設計の仕方が考えられます。働き方の柔軟性や労働効率の向上に最も適する形をご検討ください。

<参考>(2024.8.8閲覧)

フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001138969.pdfPDF

令和5年 勤務時間に関する勧告の骨子(人事院)
https://www.jinji.go.jp/content/900031338.pdfPDF

※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。