Question
社員から「弔慰金の制度があることを知らなかったため、1年前に親族が亡くなった際に申請しなかった。 今から申請をするので支給をしてほしい。」と申し出があったのですが支給すべきでしょうか。 就業規則に申請期限は設定していませんが、今更申請を認めるべきか、社内で判断が割れています。
Answer
慶弔金は、就業規則等でその支払い条件や具体的な金額を定める場合には賃金扱いとなるため、 申請期限について会社規定がない場合は、未払い賃金の請求期間である3年以内の申請に対しては支給する必要があります。
<基本事項>
労働基準法第11条では賃金について「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、 労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」と定義付けており、この定義に則れば、 労働の対価というよりも福利厚生の意味合いが強い慶弔金は賃金とは見做されないことになります。 ただし、厚生労働省による通達(労働基準法の施行に関する件 昭和22年9月13日発基17号)では 「退職金、結婚祝金、死亡弔慰金、災害見舞金等の恩恵的給付は原則として賃金とみなさないこと。 但し退職金、結婚手当等であって労働協約、就業規則、労働契約等によって予め支給条件の明確なものはこの限りでないこと。」とあり、 就業規則等に従って支給されるものは賃金に該当すると一般的に解釈されています。
慶弔金は会社が任意で規定するものであるため、次の例のように支給要件や期限等を設けて、 これらに該当しない場合には不支給とすることも認められます。
(規程例1)弔慰金
社員の配偶者、子、父母、祖父母が死亡し、死亡または葬儀から○カ月以内に人事部へ申請のあった場合は、次の弔慰金を支給する。
配偶者 ○○円
子 ○○円
また、慶弔金だけでなく、慶弔休暇についても同様に申請や取得の期限を設けておくと、社員とのトラブルが起こりにくいです。
(規程例2)忌引休暇
死亡から○ヵ月以内の葬儀、埋葬時に一括または分割して次の日数の休暇を受けることができる。
配偶者 ○○日
子 ○○日
・・・
なお、会社には就業規則の周知義務があります。就業規則は各社員へ配布したり、各職場に掲示したりして周知をし、 社員が常時確認できなければなりません。特に、慶弔金などは該当者になるまで制度をよく理解していない社員も多いと考えられるため、 該当する機会には上長や人事担当から案内があると親切です。また、所定の申請システムや申請書を用いる場合には、 各職場においてシステムへのアクセス環境の整備や、申請書の設置をしておきましょう。
<今回のケース>
今回のケースでは、就業規則に慶弔金の規定はあるものの申請期限については予め規定していなかったため、 未払い賃金の請求期間である3年以内に申請されるものについては支給をするようお伝えをしました。 今後は慶弔金や慶弔休暇については一定期限内に申請・取得をするよう規定しておくとともに、 社員に十分な周知がなされているのか再確認することをおすすめします。
<参考>
「労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)」e-GOV法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049(2023.12.27閲覧)
「労働基準法の施行に関する件」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb1896&dataType=1&pageNo=1 (2023.12.27閲覧)
「未払賃金が請求できる期間などが延長されています」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/000617974.pdfPDF(2023.12.27閲覧)
「就業規則の周知と効力」厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/syugyo_06.pdfPDF(2023.12.27閲覧)
※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。