Question
日本からの海外出張者の労務管理に関しては、出張中も日本の労働基準法が適用されると理解しています。これまで日本の本社から海外法人への出張者には、本社の営業日に勤務をし、本社の休日には出張先においても休日とすることを命じてきましたが、長期出張者にとっては現地の就業カレンダーとずれることで業務遂行や現地社員とのコミュニケーションに支障が出ています。
海外出張者に現地の就業カレンダーを適用することはできますか。
Answer
ご理解のとおり、日本からの海外出張者には日本の労働基準法が適用されますが、労働基準法の許す範囲内で現地の労働日・休日に合わせて勤務をすることは可能です。
<基本事項>
日本の労働基準法に違反しない範囲内であれば、現地の就業カレンダーを適用して勤務をさせることは可能です。ただし、日本/現地のどちらに合わせて勤務するとしても、在籍している日本の事業所の営業日を基準に勤怠実績を管理し、給与支給においても日本の事業所の営業日を基準に欠勤控除や割増支給をすることが労働基準法上求められます。
以下に例を示します。
海外出張中でも日本の就業カレンダーを適用する場合
- 日本営業日で現地休祝日に勤務する場合:通常の出勤扱いとする
- 日本休祝日で現地営業日に休む場合:通常の休日扱いとする
海外出張中は現地の就業カレンダーを適用する場合
- 日本営業日で現地休祝日に休む場合:欠勤扱いとするか、振替休日・有給休暇のいずれかを取得する
- 日本休祝日で現地営業日に勤務する場合:休日勤務扱いとするか、振替出勤をする
また、勤務時間の管理についても日本の労働基準法や就業規則が適用されます。実際には多くの会社では出張中は事業場外みなし労働時間制を適用しているため、詳細な勤務時間の管理や、勤務時間に合わせた給与の調整は不要なことが多いです。ただし、上司が同行して出張するなど勤務時間の把握が可能な場合には、事業場外みなし労働時間制を適用せず、実際の勤務時間を管理し、それに合わせて割増賃金の支給または控除を行うことも考えられます。
<今回のケースについて>
日本/現地のどちらに合わせて勤務するのが良いかは出張者の業務内容等により異なりますが、長期出張者には現地の就業カレンダーを適用した方が勤務しやすい場合が考えられます。また、現地の就業カレンダーを適用する場合は事前に振替出勤・休日を指定しておけば欠勤の発生や有給休暇の消費を回避することができることを周知しておくとよいでしょう。
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