Question
当社では新たにインストラクター制度を導入し、インストラクターに対しては毎月インス トラクター手当を支給することを検討しています。手当を新設して支給するにあたって対 応すべきことはありますか。
Answer
インストラクター手当に限らず、月例給与として手当を支給する際には必ず就業規則への 記載が求められます。また、割増賃金の算定基礎に含めるべきかの確認もしましょう。
<基本事項>
月例給与として手当を新設する際に、法令上必ず対応すべきことが2つあります。
1つ目は、月例給与として支給する手当は就業規則への絶対的記載事項(賃金関係)に該当するため、新設の際には就業規則へ手当の金額、支給要件、対象者、支給日といった事項の記載をすることです。
2つ目は、割増賃金の算定基礎に入れるべきかを確認し、入れる場合は賃金計算方法を変更することです。割増賃金の基礎となるのは、所定労働時間の労働に対して支払われる1時間当たりの賃金額です。割増賃金の算定基礎から除外できるものとして7つの手当・賃金が厚生労働省により提示されていますが、この7つに当てはまらない場合は全て割増賃金の算定基礎に含めることが求められます。
参照 : 「割増賃金の基礎となる賃金とは?」厚生労働省
https://jsite.mhlw.go.jp/tottori-roudoukyoku/library/tottori-roudoukyoku/pdf/26kajyu_4.pdfPDF (2023.6.12 閲覧)
手当は月例給与の中でも「特定の目的で特定の対象者に対して支給される給与」という位置 づけであり、様々な状況に応じて柔軟に増減できるところに特徴を持つ給与です。手当を設 ける意義としては
- 様々な職務を経験させたり、転勤によって勤務地を変えたりするときに、各社員の置かれた状況に対応できる給与支給を図り、基本給では対応しづらい面に対してアプローチを行うこと
- 給与の一部を手当にすることで、退職金や賞与の算定基礎に算入しない項目とすることができること
が挙げられます。会社は、退職金や賞与および欠勤控除の算定基礎に入れるか否かを任意で決定することができます。手当には大きく分けて
- 労働の提供に直接関連する手当(役職手当・資格手当・通勤手当等)
- 労働の提供に直接関連しない手当(家族手当、住宅手当等)
の2種類がありますが、一般的には両者とも退職金や賞与の算定基礎には含めず、また前者のみを欠勤控除の算定基礎とするケースが多いようです。なお、通勤手当を欠勤控除の算定基礎とする場合は、通勤手当が非課税となる関係で、その他の月例給与とは分けて控除額を算定する必要があります。
<今回のケースについて>
インストラクター手当の新設にあたっては割増賃金のみならず、退職や賞与および控除額の計算方法も変更される可能性があるため、賃金実務担当者の方は注意が必要です。
※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。