人事・労務Q&A

出向者への36協定の適用について

Question

当社において非管理職である社員を他社に出向させることになりました。当該社員が出向先で従事する業務内容を考慮し、また、出向先からの要望もあり、出向先での役職は「課長」(出向先において管理監督者の扱い)ということで出向契約を締結しました。

当該社員の日々の就業状況の管理は、出向先において実施する想定です。ただ、出向先の組織風土は当社とはかなり異なっており、管理職・非管理職問わず、長時間勤務を行っている社員が多いと聞いています。当社としては、社員の健康管理の面からも、長時間労働は避けたいと考えていますが、36協定の適用はどのようになるのでしょうか。

Answer

出向先の36協定が適用されるのが通常であり、出向先において管理監督者であるなら、36協定の適用対象外となります。ただし、出向元による健康管理は必要であり、就業状況に見合う手当を支給するのが通常です。

<基本事項>

出向者の雇用条件は、出向元・出向先間で締結される出向契約によって定められますが、就業時間等の管理については、通常出向先において実施されるケースが多いことから、36協定についても出向先のものを適用するのが一般的です。そのため、出向先で管理監督者に位置付けられている者については、出向先においては「36協定の適用対象外」ということになります。

ただし、出向者は引き続き出向元社員としての身分も併せ持ちますので、出向元の企業に、当該社員の健康管理や安全配慮の義務は残ります。また、給与については、出向元から支給するケースが一般的ですので、出向元においては非管理職であるという前提で時間外勤務手当相当額を支給したり、出向に伴う就業条件変更については出向手当を支給するのが通常です。

今回のケースについて

ご相談のケースでは、出向社員が出向先において管理監督者に位置付けられること、出向先では長時間労働が当たり前であることなどから、出向社員の実際の勤務時間もかなり長時間にわたることが予想されます。

この場合に、出向元企業が実施すべき具体的な対応としては、健康管理・安全配慮面、給与面において、以下のようなことが考えられます。

■健康管理・安全配慮面の対応

  • 出向社員の勤務状況について、タイムリーに出向先から情報提供してもらう。
  • 出向元の36協定の時間数を超過しそうであるなど、長時間労働が続く場合は、出向先へ配慮を求める。

■給与面の対応

  • 出向元の給与制度に基づいて、時間外勤務手当を支給する。
  • 上記とは別途、出向に伴うハードシップ(長時間勤務そのものというよりは、出向に伴う就業条件等の変更によって生じるもの全体を指す。)に対して、出向手当を支給する。

ただし、給与面の対応については、「支給すれば長時間労働させてもよい」という趣旨ではありませんので、まずは健康管理・安全配慮面の対応をしっかりやっていくのが重要になります。

※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。