Question
社員から「他企業が経営する企業主導型保育施設への入園希望があり、企業共同利用契約へ の捺印がほしい」と言われました。共同利用契約をするにあたって気を付けるべきことはありますか。
Answer
共同利用するのみであれば設置者のような運営責任を会社が負うことはないと考えられま すが、会社が契約当事者となり費用が発生する可能性があるため、契約内容や費用を会社と 従業員のどちらが負担するのか等、社内でルールを決めておきましょう。
<基本事項>
企業主導型保育とは、企業が設置する保育施設に対し、施設の整備費及び運営費の助成が行 われるものです。複数の企業が共同で設置して利用したり(共同設置・共同利用)、また他 の企業が単独で設置した保育施設を複数の企業が共同で利用したり(単独設置・共同利用) もできます。複数の企業の従業員が施設を利用する際には、企業が共同利用契約を締結する必要があり、従業員(保護者)を通じた契約は禁じられています。
共同利用契約書には、以下の内容が入っているかご確認ください。
【参考】共同利用契約書に記載する内容
- 契約の目的
- 保育の実施場所(保育施設所在地)
- 保育園の運営、保育内容、安全対策
- 利用定員数、保育園の利用、退園の手続き
- 利用料金、委託料、支払い
- 契約の期間
- 個人情報保護、秘密保持、守秘義務
- 損害賠償
- 契約の解除、不可抗力による契約の終了
- 反社会的勢力の排除
- 協議事項
- 裁判管轄の合意
引用 :「共同利用契約のポイント」公益財団法人児童育成協会
https://www.kigyounaihoiku.jp/sharing/point (2023.4.12 閲覧)
保育施設の共同利用のメリットは、やはり社員の産休・育休からの復帰を促すことで労働力確保につながることです。特に他企業が単独設置した施設を共同利用する場合は、設置者となるよりもコストや責任面でのハードルが低いため、会社の従業員に対する保育支援として利用することが可能です。
一方で、単独設置の保育施設を共同利用枠できる機会はそれほど多くないと考えられます。 また、費用に関しては従業員が負担すべき保育施設の利用料金の他、共同利用枠を確保する ための費用等が会社へ請求される可能性があります。会社としてどのような費用負担を認めるのか、また、利用料金についても全額従業員負担とするのか、あるいは保育支援として会社が一部負担するのか等、方針を決めておきましょう。
<参考>
「企業主導型保育事業の制度の概要と企業のメリット」内閣府
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/ryouritsu/tachiage/1_01.html (2023.4.12 閲覧)
「共同利用を検討中の法人様」利用者もオーナーも笑顔になれる企業内保育所・院内保育 所の開設・運営 NAVI 公益財団法人児童育成協会
https://www.kigyounaihoiku.jp/sharing (2023.4.12 閲覧)
「共同利用契約のポイント」公益財団法人児童育成協会
https://www.kigyounaihoiku.jp/sharing/point (2023.4.12 閲覧)
「共同利用タイプのメリット・デメリットとは?」全研本社株式会社
https://www.inhouse-childcare.com/open/sharing.html (2023.4.12 閲覧)
<基本事項>
貴社は設置には関わらず共同利用契約のみを求められているため、保育施設でトラブルが 発生しても会社側で重大な責任を負わなければならな事態は考えにくく、したがって当該 従業員の保育のために契約締結をしても問題ないと考えます。契約内容には
- 保育所でのトラブル発生時の運営責任を貴社が負うことはないこと
- 当該従業員の利用が終了したら、共同利用契約も終了すること
を記載されることをおすすめします。
また、今回は従業員側からの依頼が契機であり利用枠も少ないと考えられるため個別対応 で問題ありませんが、共同利用の契約数や利用枠が拡大してきた際には、運用ルールを確立して従業員へ通知することもご検討ください。
※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。