Question
これまで正社員として雇用していた者を、本人の都合により週2日勤務のパートタイム労働者へ転換して雇用することになりました。 社会保険の手続きや、年次有給休暇の付与についてはどうするべきですか。
Answer
パートタイム労働者の場合、所定労働日数・時間や給与によって社会保険の適用除外となるなど、取扱いは様々です。 近年頻繁に法改正が行われており、被保険者の対象も拡大傾向にあるため、適用の際には予め社会保険事務所に適切な取り扱いをご相談ください。
ここでは、パートタイム・有期雇用労働者へ転換する際の主な注意点について解説します。
<基本事項>
パートタイム・有期雇用労働者へ転換する際の主な注意点4つについて解説します。
1.社会保険
① 雇用保険
雇用形態等により被保険者とならない場合があります。契約期間や所定労働時間に関連する適用除外の要件は以下のものがあります。
- 1週間の所定労働時間が20時間未満
- 同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれない
- 季節的に雇用される者であって、以下のイまたはロに該当する
- イ 4か月以内の期間を定めて雇用される
- ロ 1週間の所定労働時間が30時間未満
② 労災保険
労災保険は、従業員の労働時間や雇用形態にかかわらず全ての労働者を加入させる義務が会社にあり、転換後も取扱いは変わりません。
③ 健康保険・厚生年金保険
「1週間の所定労働時間」および「1か月の所定労働日数」が、同一の事業所で使用される労働者に適用される所定労働時間・日数の4分の3以上の労働者は被保険者となります。また、前述の要件を満たさない場合も、特定適用事業所または任意特定事業所において以下の要件を全て満たす場合は被保険者となります。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 2カ月を超える雇用の見込みがある
- 臨時の手当、賞与、割増賃金等を除いた賃金月額が88,000円以上
- 学生ではない
2.退職金
退職金については法令上の規定がなく、会社の規定に従います。正社員の退職金制度はあるけれどもパートタイム・有期雇用労働者の退職金制度は導入していないという場合には、正社員として勤務した分の退職金の支払い時期、金額、転換後の取扱いについて本人へ明示して合意をとることをおすすめします。 このような場合、正社員としての雇用契約終了時に精算をすることや、支給時期はパートタイム・有期雇用労働者としての契約終了時としつつ支給額は正社員としての雇用契約終了時の条件で確定しておくことが考えられます。
3.年次有給休暇
年次有給休暇に関しては、算定条件となる勤続年数については正社員勤務時代からのものが引継がれ、既に付与された休暇は保持されますが、 転換後に新たに付与する際には付与日時点での所定労働日数に応じて正社員とは異なる取り扱いをすることが認められます。 また、付与のタイミングについても「1年に1回付与」の法令上の要件を満たすよう、転換後は正社員としての最新の付与日から1年後以内に次の付与する必要があります。
4.無期転換権
こちらはパートタイム労働者と有期雇用契約を締結した場合に、新たに注意が必要なものとなります。 有期雇用労働者の無期転換ルールとは「同一の使用者との間で、有期雇用契約が更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、 期間の定めのない労働契約に転換できるルール」されています。 起算日はあくまで有期雇用契約を締結した日となり、正社員としての勤続年数は含まれません。
以上が、正社員をパートタイム労働者へ転換した場合に注意が必要な4つの観点です。法令上の規定と会社規定の両方をよく確認し、 必要に応じて本人への説明や同意取得をしながら進めるようにしましょう。
<参考>
「雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147331.html (2023.12.14閲覧)
「パートタイム・有期雇用労働ガイドブック」東京都産業労働局
https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/shiryo/parttime-r/index.html (2023.12.14閲覧)
「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/tanjikan.html (2023.12.14閲覧)
「年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyungyosei06.html(2023.12.14閲覧)
※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。