人事・労務Q&A

懇親会実施時の注意

Question

新型コロナ感染症が収束してきましたので、弊社でもコミュニケーション施策として、リア ルでの社員懇親会を会社内で実施しようと思っています。実施にあたって、特に労務管理、 労災に関して注意すべき点を教えてください。
・実施時間:就業時間終了後
・場所:社内
・参加:任意
・在宅勤務後に参加する方には往復の交通費を支給予定

Answer

社内イベントを実施する際には、指揮命令の有無を整理して検討しましょう。参加者にあたるか、主催者にあたるかによって、労務管理や労災の整理が異なるので留意です。

<基本事項>

■ 労働時間
労働時間の考え方は以下の通りです。
○労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たること
労働時間に該当するか否かは、労働契約や就業規則などの定めによって決められるものではなく、客観的に見て、労働者の行為が使用者から義務づけられたものといえるか否か等によって判断されます。
たとえば、次のような時間は、労働時間に該当します。

  1. 使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間
  2. 使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)
  3. 参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていたとき

■ 労働災害
労災保険の考え方は以下の通りです。
○労災保険制度は、労働者の業務上の事由または通勤による労働者の傷病等に対して必要な保険給付を行い、あわせて被災労働者の社会復帰の促進等の事業を行う制度
その費用は、原則として事業主の負担する保険料によってまかなわれています。労災保険は、原則として一人でも労働者を使用する事業は、業種の規模の如何を問わず、すべてに適用されます。なお、労災保険における労働者とは、「職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者」をいい、労働者であればアルバイトやパートタイマー等の雇用形態は関係ありません。

今回のケース

今回は参加が任意である参加者(一般社員)と、業務として指揮命令下で事務局として対応する主催者(幹事社員)で整理が異なります。
今回のケースでは、参加が任意とされているイベントであることから、一般社員に関しては、労働時間には含まれません。また、業務並びにその移動に伴うものではないため、もし万一けが等をされた場合であれ、労災に認定されないと考えられます。(※)
他方、幹事社員においては、イベントの完遂を指揮命令されている場合には、業務とみなされる為、労働時間に含まれ、且つ、万一けがなどをされた場合には、労災と認定されると考えられます。(※)

※注:上述の整理は、一般的な解釈での回答になりますので、最終判断は最寄りの労基署へご相談くださ い。

指揮命令下であるか判断する際には、使用者の明示または黙示の指示・命令の有無が鍵になりますので、一般社員のイベントへの参加を業務扱いとしないことを示すため、イベントの 周知の際には、イベントへの参加が任意である旨を明記することをお勧め致します。
併せて、労災と整理するには業務であることが前提となりますので、業務でない一般社員の参加者を守る点から、必要に応じて損害保険に加入することも一案です。

参考

「労働時間の適正な把握のために 使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000187488.pdfPDF (2023.9.11 閲覧)

「労災補償」 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousai/index.html (2023.9.11 閲覧)

「業務災害について」 東京労働局
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/rousai_hoken/ro-gyoum.html (2023.9.11 閲覧)

「通勤災害について」 東京労働局
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/rousai_hoken/tuukin.html  (2023.9.11 閲覧)

相談窓口

中央労働基準監督署
・方面(労働条件・解雇・賃金)  03(5803)7381
・労災課(労働保険)  03(5803)7383

※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。