人事・労務Q&A

年俸制の導入

Question

現在、当社の給与は日給月給制を採用していますが、一部職種に年俸制の導入を検討してい ます。設計時に注意すべき点を教えてください。

Answer

年俸制を設計する際は賞与の取り扱いを整理しておきましょう。また、年俸制といっても毎 月の給与実務の負担が無くなるわけではないことにご留意ください。

<基本事項>

年俸制とは、労働者の成果・業績に応じて年単位で賃金額を決定する制度のことです。しかし、実際の支給にあたっては年俸額が年 1 回まとめて支給されるわけではなく、労働基準 法の毎月払いの原則が適用されます。よって、年俸額を分割して毎月支給する運用が求められます。
また、毎月の月例給の他に賞与を支給している会社は多いですが、年俸制においても賞与を支給することは可能です。例えば、予め年俸額を 16 分割などして毎月支給した残りの 4/16 は賞与として支給する方法や、年俸額とは別に賞与額を決定してオントップで支給する方法がとられます。前者は予め賞与額が決まっているため運用しやすいものの、法令上は賞与ではなく年俸額の一部であると解釈されるため、企業の業績が悪化したとしても予め決められた金額を支給する必要があることにご注意ください。
さらに、年俸制はよく裁量労働制等と混同されがちですが、あくまで賃金額の決定方法についての制度をいい、日給月給制と同様に厳密な労働時間管理に基づいた給与支給が求められます。よって、実労働時間が法定労働時間「1 日 8 時間、週 40 時間」を超えた場合の時 間外割増手当や休日割増手当(管理監督者は除く)、深夜割増手当についても支給が求められます。一方で、実労働時間が所定労働時間を満たさない場合には、その分の欠勤控除をすることも可能です。年俸額はあくまで所定労働時間を満たす場合の賃金額であり、ノーワー クノーペイの原則に基づいた欠勤控除は労働契約違反とはなりません。
なお、年俸制を適用できる労働者の種類に制限はありませんが、年俸制の本来の目的が労働 時間ではなく成果・業績に対して報酬を支給することであるため、労働時間の制約を受けない管理監督者や、裁量労働制を適用されている労働者との相性が良いと考えられます。

今回のケースについて

年俸制を設計する際には、年俸額の決定方法のみならず、賞与の取り扱い、割増手当や控除が発生する場合の計算方法について整理が必要です。

参考

「1.年俸制の適用労働者の範囲は」東京労働局
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/yokuaru_goshitsumon/nenbouseitingin/q1.html (2023.8.4 閲覧)

「3.年俸制における賞与と毎月払の関係」東京労働局
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/yokuaru_goshitsumon/nenbouseitingin/q3.html (2023.8.4 閲覧)

「4.年俸制適用労働者にも時間外労働手当を支払う必要があるか」東京労働局
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/yokuaru_goshitsumon/nenbouseitingin/q4.html (2023.8.4 閲覧)

roudoukyoku/yokuaru_goshitsumon/nenbouseitingin/q4.html(2023.8.4 閲覧) 「8.年俸制における欠勤した場合の減額」東京労働局
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/yokuaru_goshitsumon/nenbouseitingin/q8.html (2023.8.4 閲覧)

※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。