人事・労務Q&A

出張期間中の実家への宿泊について

Question

出張の際に実家へ帰省したいという社員がいます。出張先の近くに実家がある場合、ホテルではなく実家へ宿泊したいという希望は認めても良いでしょうか。交通費や日当等の支給 はどうすればよいでしょうか。

Answer

出張期間中であっても業務時間外の過ごし方は労働者に委ねられるため、実家への宿泊を希望する社員がいれば認めざるを得ません。ただし、出張旅費や日当の支払要件については 労働法上の規定はなく会社が任意に定めるものであるため、実態に応じて不支給とするこ とも可能です。

<基本事項>

労働法上は原則、業務時間外や休日の過ごし方、過ごす場所は労働者に委ねられます。一方で、社員の出張を命じた際の出張旅費や日当の支払要件については労働法上の規定はありません。業務遂行上必要な交通費等は会社負担としても、それ以外の手当については会社が任意に定めることができます。
出張の際に会社の用意したホテルではなく実家へ宿泊する場合、出張先との往復交通費は宿泊場所に係わらず発生するため会社が支給すべきであるものの、宿泊費は不支給として問題ありません。また、業務命令上の移動前や出張先での業務終了後に帰省をしたいという場合には、出張先と実家間の交通費はやはり不支給として問題ありません。
なお、例外的に会社が労働者に対して、出張期間中に業務外の外出をしないよう求めることも考えられます。例えば、会社貸与品の PC やスマートフォンについて自宅や事業所からの 持ち出しを規定で禁じている場合には、実家への持ち出しは不可として結果的に帰省をしないよう求めることになります。また、テロやデモといった治安の悪化や感染症を理由として危機管理の観点から滞在地を制限することも想定されます。
出張の際に業務外の外出・滞在をすることによる主なリスクとして、出張中は通常出発地と 出張地間の移動も含めて労災保険の対象となりますが、私用外出中は対象外となるため事 故等が発生しても補償が受けられないことが挙げられます。また、日当や交通費、宿泊費等の支給については事前に会社と労働者との認識を合わせておかないと、後にトラブルとなる可能性もあります。
さらに、海外出張中の業務外の外出・滞在のリスクとしては、年間の現地国の滞在日数が長くなることにより租税条約の非課税日数(大体 183 日)を超えてしまい課税対象とされてしまうことです。頻繁に同じ国へ出張が発生している場合には注意が必要です。

今回のケースについて

出張の際に実家へ帰省したいと社員が希望している場合、それが出張中の業務遂行に影響しない限りにおいて会社は認める必要があると考えられます。ただし、必要に応じて社員の滞在先を把握するなど、会社として安全および情報の管理に努めましょう。また、日当や交通費、宿泊費等の支給についても社員と事前に確認されることをおすすめします。

※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。