人事・労務Q&A

振替休日と代休の違い・運用におけるポイント

Question

突発対応が必要になり、急遽、休日に数時間勤務をしてもらいました。この場合、振替休日と代休どちらを付与するのが適切でしょうか。

Answer

振替先の休日を指定せずに休日に勤務を命じた場合、事後の振替休日の付与はできないため、代休の付与が適切です。 代休は、会社の定めによっては日数単位だけでなく時間単位での付与も可能です。付与しない場合でも、休日労働の結果、 週に1回以上かつ4週間に4日の休日が付与できていない場合は労働基準法違反となりますので注意しましょう。

<基本事項>

休日に勤務する代わりに別途休みを付与する方法として、振替休日と代休は混同されがちです。 本記事では、2つの違いや運用におけるポイントを紹介します。
① 振替休日と代休の違い
振替休日は、就業規則で休日と定めている日を予め労働日としたときに、代わりに別の労働日を休日として指定する日を指します。 このため、勤務する日は休日扱いとならず、割増賃金は発生しません。ただし、振替により1週間の法定労働時間(40時間)を超えた時間については時間外労働とみなされます。
例:12/8(日)を勤務日とする場合(1日8時間が所定労働時間・日曜日が法定休日の場合)
1)に振り替える場合は、12/8の勤務は割増賃金なし
2)に振り替える場合は、12/8の勤務は時間外割増賃金発生

一方、代休は、休日労働をした後にその代償として休みを与えることを指します。 勤務する日は休日扱いのままであるため、勤務日が法定休日であれば割増賃金の支払いが必要です。 また、会社の定めによっては日数単位だけでなく時間単位で付与することも可能です。
例:12/8(日)を勤務日とする場合(1日8時間が所定労働時間・日曜日が法定休日の場合)
1) 2)いずれを代休とした場合も、12/8の勤務は休日割増賃金発生
※なお、12/7(土)に勤務する場合には所定休日のため休日労働扱いとはならず、休日割増賃金の支払いは発生しない(一方で週40時間を超えるため、時間外勤務の支払い義務が発生する)

② 運用における留意点
実際の運用にあたっては、以下の点に留意しましょう。
・36協定(休日労働、時間外労働)の締結
代休は休日労働を前提とした制度であるため、36協定で休日労働について定めていることが前提となります。 一方、振替休日は時間外労働が発生しうるため36協定で時間外労働について定めておく必要があります。

・変形労働時間制やフレックスタイム制度の導入有無
変形労働時間制は平均して1週間の労働時間が40時間を超える場合、フレックスタイム制は清算期間内で法定労働時間を超えた場合に時間外労働と扱われるため、 これらの制度が導入されている場合は、労働時間が週40時間を超えたとしても即座に時間外勤務扱いとはなりません。

・就業規則への記載
振替休日も代休の付与も想定している場合には、予め就業規則で明記しておきましょう。 振替休日は、労働基準法上の労働する義務のない日に勤務させることになり、当該日は労働日の扱いとなることから割増賃金も発生しないため、就業規則での定めが必須です。 一方、代休は、通常の休日労働と同様に割増賃金の支給もあり就業規則での定めがなくとも付与できますが、時間単位で付与をする等会社によって条件も異なるため、明確な制度運用ができるよう明記しておくことが望ましいでしょう。
また、予め、休日に労働する場合の定義(例:所定労働時間分を勤務した場合を休日労働と定義する、等)を明確に定めておくとよいでしょう。 これにより、例えば2時間だけ休日勤務を命ずる代わりに丸1日の振替休日を付与する等、アンバランスな運用の発生を防ぐことができます。

・管理職(管理監督者)への対応方針の明確化
管理職は労働基準法第41条により、休日の規定は適用されない対象であるため、原則振替休日や代休付与の対象者とはならず、割増賃金も発生いたしません。 しかし、安全配慮義務の観点から、振替休日や代休の付与を認める等、予め就業規則に定めておくことも一案です。

<今回のケース>

今回は、管理職が法定休日に突発対応で2時間勤務した場合の取り扱いについてのご相談だったため、 原則として管理職は休日労働適用除外の対象であることから法律上の対応義務はないと回答したうえで、代休制度がある場合の代休付与を推奨いたしました。

<参考>(2024.12.09閲覧)

「第4章 労働時間、休憩及び休日」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000118961.pdfPDF
代休?振替休日?(山梨労働局)
https://jsite.mhlw.go.jp/yamanashi-roudoukyoku/kantoku/roudoukijun/19.html
※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。