人事・労務Q&A

業務や通勤時の社有車・マイカー利用の注意点

Question

営業職の社員に対して、社有車やマイカーでの営業先回りを認めています。 移動中に事故が発生した場合、労災補償の対象となりますか。また、他に会社として注意するべき事項はありますか。

Answer

社有車・マイカーともに、通勤時および業務上の事故は原則労働災害と認められ、労災補償の対象です。 また、事故発生時には社員のみならず会社側で損害賠償責任を負う可能性もあるため、 保険の加入等、必要な対策を講じておきましょう。

<基本事項>

社有車やマイカー利用時でも、通常の労働災害と同様、業務上の事故であれば業務災害、 通勤時の事故であれば通勤災害とみなされます。

業務災害は業務上の事由による負傷や疾病等を指し、事故発生時に事業主の支配・管理下にあるか、 業務に従事しているかによって判断されます。社有車での移動はプライベートの事由によるものと想定されづらく、 職務上の規律が及んでいると理解される傾向にあります。マイカーを利用して事業主の管理下から離れていても、 営業中の外回りなど事業主の命を受けた業務遂行のための移動であれば、事故は原則業務災害と認められます。

通勤災害は、社有車やマイカー利用時であっても公共交通機関を利用する際と同様に、 就業場所と他の就業場所・住居等の間を合理的な経路・方法で移動している途中の災害であることが前提です。 営業職等の外勤者が、特定区域で数か所の営業先を担当し自宅と往復している場合は、 自宅を出てから最初・最後の営業先との往復が通勤とみなされ、この区間の移動中の事故は通勤災害と扱われます。 ただし、通勤中に私用のため移動経路を逸脱・中断する場合には厚生労働省令で定める一部の例外を除き、 その間とその後の移動は通勤とみなされず、事故が発生した場合も労災補償の対象とはなりません。

<事故発生時の会社の責任について>

社員が社有車やマイカーを利用して通勤や業務遂行のために移動している間に事故にあった場合、 会社は使用者責任(民法715 条)や運行供用者責任(自動車損害賠償保障法第3条)を問われ、 損害賠償責任を負うことがあります。会社が黙認含め利用を認めている場合の事故については一定の責任を負うことになるため、 どのような場合にマイカーや社有車の利用を認め、禁止しているのか明確にしておくことが重要です。

<対処策について>

社有車やマイカーの通勤や業務での利用を認める場合は、社内規程等で使用のルールを明確に定め、 労災補償の手続き等、事故発生時の対応を予め確認して備えましょう。
さらに会社側の管理に過失がないよう、社有車やマイカーでの通勤や業務上の利用を認める前に免許証や 車検証の確認を行い、車両保険に加入する等、車両の管理を徹底することを推奨します。 事故が発生しないよう社内で定期的に研修等を実施し、社員の交通安全に対する意識を底上げすることも効果的です。

<参考>(2024.7.11閲覧)

労災保険給付の概要(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001241566.pdfPDF

※本記事の内容は、掲載日時点での法令・世間動向に則ったものであり、以後の法改正等によって最新の情報と合致しなくなる可能性がある旨ご了承ください。